遅れてきた35番のセンターバックの躍動。前橋育英高校・鈴木陽がチームにもたらすポジティブな影響の意味 【NEXT TEENS FILE.】
その35番のセンターバックは、突然タイガー軍団の最終ラインに現れた。9月15日。プレミアリーグEAST第14節。川崎フロンターレU-18とホームで戦う前橋育英高校のメンバーリストに、見慣れない名前を見つける。鈴木陽(のぼる)。生年月日から計算すると、3年生だということがわかる。
慌ててその1つ前の試合、リーグ後半戦の初戦となった昌平高校戦の試合記録を見ると、メンバー表の上から5番目にその名前は記載されていた。つまりはスタメンだったということ。その試合が鈴木にとってはプレミアリーグデビューだったのだ。端から見ればいきなりの抜擢のように映ったが、「プリンスリーグに出ている時から最後の砦というか、しっかりゲームを引き締めてくれる役割をしていたんです」とキャプテンの石井陽が教えてくれる。
「前期はプリンスで全試合に出て、夏休みにAチームに上がることができて、プレミアに出られるようになったのは昌平戦からでした」。鈴木自身もそう証言するように、もともと今季のスタートはプリンスリーグ関東1部を主戦場とするBチーム。ただ、キャプテンとしてすべての試合に出場。3バックの中央で関東の強豪相手に腕を磨いていたという。
試合が始まると、その正確なビルドアップ能力が目を引く。パスワークを重視するスタイルの前橋育英はセンターバックにも足元の上手さが求められるが、横にいる青木蓮人とともに左右へパスを散らしながら、攻撃の起点を作り出していく。
例年以上の酷暑となった夏。チームは大きな変化を求められていた。プレミアは開幕3連敗スタート。そこから少しずつ持ち直したものの、前半戦を終えての順位は8位。加えてインターハイ予選でも、準決勝でPK戦の末に敗れて全国出場を逃すなど、なかなか歯車がうまく噛み合わない状況下で、山田耕介監督は“競争”を促してきたという。
「この夏は競争が一番でしたね。いろいろな選手をいろいろなポジションで試したりして、その結果としてノボル(鈴木)が出てきたと。あの子は効いていますよ。賢いです」。そこで台頭してきたのが、プリンスリーグで着実に結果を残していた鈴木だったというわけだ。
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