米財務省、イランによる違法な石油輸送ネットワークに対する大規模な制裁を発表
米財務省は3日、イランによる違法な石油輸送ネットワーク、通称「影の船団(ダークフリート)」に対する大規模な制裁を発表した。対象は35の企業・船舶で、これらはイラン産石油を密輸し、外国市場での販売に関与しているとされる。今回の措置は、イランによる攻撃や核開発の進展を受け、11月の制裁をさらに強化したもので、イラン経済の柱である石油部門に圧力をかける狙い。 「影の船団」とは、イランが石油輸出による収益を核開発や軍事技術開発、中東地域の代理勢力への支援に活用するために利用する密輸ネットワークを指す。具体的には、偽造文書や自動船舶識別装置(AIS)の不正操作、船名や国旗の頻繁な変更といった手法で活動が行われている。 今回の制裁対象には、マーシャル諸島船籍の「JAYA」やパナマ船籍の「BLACK PANTHER」などが含まれ、これらの船舶は数千万バレル規模の石油を運搬しているとみられている。アラブ首長国連邦(UAE)や中国、インドを拠点とする企業が所有や運航に関与していることも明らかになった。 制裁対象となった企業の一部には、次のような活動が確認されている。 1.UAEのガリレオス・マリン・サービシズ(GALILEOS MARINE SERVICES)=船舶「JAYA」を運航し、米国の制裁対象である中国企業CCPC向けにイラン産原油を輸送 2.パナマのオーシャン・グローリー・ジャイアントOGG(OCEAN GLORY GIANT OGG)=イラン国営石油会社(NIOC)の代理として、100万バレル以上の石油を輸送 3.中国のガフォディル(GAFFODIL)=船舶「FT ISLAND」を運航し、中国市場への原油供給を担当 米国の制裁により、対象者の米国内資産は凍結され、米国人との取引が禁止される。違反者には厳しい罰則が科せられる。財務省のブラッドリー・スミス次官代理は「影の船団を完全に排除する」と述べ、米国の強い意志を示した。 今回の制裁はイランだけでなく、関与する多国籍企業や第三国にも影響を及ぼす可能性がある。物流の混乱や関連国との外交関係への影響も懸念される。一方で、イランがこれまでも制裁を巧妙に回避してきた事実から、さらなる監視と国際的な協力の強化が求められる。 今回の措置は、イランの石油収益を削減する一方、地域の緊張を一層高める可能性がある。米国は国際社会との連携を強化し、この密輸ネットワークを封じ込める構え。ただ、イラン側の対抗手段や地域での影響力拡大の動きが予想されるため、事態の行方は不透明だ。 米財務省の制裁強化は、イランの核開発や地域の不安定化を抑制する重要な一手となるが、これが今後、国際海運にどのような影響を及ぼすのか。日本の海運業界も注視していく必要がある。
日本海事新聞社