中国の2020年映画興行収入が世界一に 映画館が早期再開、国産映画も「豊作」
【東方新報】中国の2020年映画興行収入が200億元(約3198億円)に達した。新型コロナウイルスの影響で2019年の3分の1にとどまったが、それでも北米市場を抜いて初の世界一となった。コロナ禍を早期に脱却し映画館の上映再開が比較的早かったことと、国産映画が「豊作」だったことから、多くの市民が映画館に足を伸ばした。 中国映画界の2020年の幕開けは順調ではなかった。1年で最も稼ぎ時である春節(旧正月、Lunar New Year)に合わせ1月下旬から大作が続々と公開される予定だったが、コロナ禍によって軒並み延期に。7月下旬から感染リスクの低い地域に限って映画館が再開されたが、入場率30%などの制約があり、上映作品も旧作が多く、客足は鈍かった。 その流れを変えたのが、8月に公開された超大作『八佰(英題:The Eight Hundred)』だった。日中戦争中の第2次上海事変で中国兵の奮闘を描いた作品がロングランヒット。入場制限が続く中で、中国歴代興行収入のベスト10入りを果たした。 さらに10月の国慶節(建国記念日)の大型連休に合わせ、ホームコメディ『我和我的家郷(英題:My People My Homeland)』や、日本では太公望の名で知られる伝説の軍師・姜子牙(Jiang Ziya)を描いた神話アニメシリーズ『姜子牙(英題:Legend of Deification)』、中国女子バレーの挫折と栄光を描いた『奪冠(Leap)』などが大ヒット。入場率75%の制限が続く中でも、国慶節連休期間中で史上2位の好成績となった。11月には巨匠、張芸謀(Zhang Yimou、チャン・イーモウ)監督が文化大革命の時代を描いた『一秒鐘(英題:One Second)』、朝鮮戦争勃発70年に合わせた戦争映画『金剛川(Jingangchuan)』も公開された。 米映画誌ハリウッド・リポーター(The Hollywood Reporter)によると、中国の興行収入は10月18日時点で19.8億ドル(約2041億円)を記録し、北米の19.3億ドル(約1989億円)を上回った。2020年末時点の興業収入は、『八佰』が31億元(約495億円)、『我和我的家郷』が28億元(約447億円)、『姜子牙』が16億元(約255億円)、『金剛川』が11億元(約176億円)、『奪還』が8億元(約128億円)。2019年の中国映画市場では米ハリウッド映画『『アベンジャーズ/エンドゲーム(Avengers: Endgame)』が3位に食い込んだが、今年は国産映画が興行収入の大半を占めた。 中国市場が世界トップになった背景には、新型コロナの世界的流行が続き、北米では映画館の再開が進んでいないことや、ハリウッドの話題作の制作や公開が延期されているという外的要因もある。中国の映画チケット代は米国の半値程度のため、世界的にコロナ禍が収束して北米映画市場が活気を取り戻せば、北米市場が世界一の座を奪い返すことも考えられる。 ただ、中国映画は急激に質もレベルアップを遂げており、今後も多くの大作や人気作品が期待される。また、ハリウッド(Hollywood)も近年は中国市場を意識した作品が増えており、ハリウッドの大作が復活すればそれもまた中国の映画興行収入を押し上げることになる。 世界的にコロナ禍の「第3波」が広がっており、各国ともに映画館の上映が完全復活を遂げるかは不透明だが、2021年も中国の映画市場と北米市場の世界一争いが続くのは確実といえる。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。