2021年度介護保険改正で何が変わる?高額介護サービス費では高所得者の自己負担額が増える?
介護保険改正で、高額介護サービス費の所得区分が見直され、高所得世帯の負担が重くなります。また、介護保険施設やショートステイを利用したときの、食費や居住費の補助も縮小されます。それぞれのポイントを解説します。
高額介護サービス費とは
介護保険のサービスメニューにあるサービスを利用限度額の範囲内で利用した場合、利用者負担は、かかった費用の1~3割です(40~64歳は1割)。たとえば、要介護1(1割負担)の方が17万5000円分のサービスを利用した場合、利用限度額の16万7650円までは1割負担の1万6765円で利用できますが、利用限度額を超えた分7350円は10割負担になります。このケースでは、合計2万4115円が自己負担額です。 高額サービス費は、同一月内に利用したサービス費の自己負担額(1~3割)が高額になった場合、所得に応じた自己負担の上限額を超えた分を申請により取り戻す制度です。同じ世帯にサービス利用者が複数いる場合には合算できます。 なお、施設サービスでの食費・居住費・日常生活費など、介護保険給付対象外のサービスの自己負担は高額サービス費の対象外です。また、福祉用具の購入費、住宅の改修費も対象外です。
自己負担の上限額は最大14万100円へ
現行制度では、高額介護サービス費の自己負担限度額は、所得区分が「現役並み」(世帯年収520万円(単身383万円)以上)が4万4400円、「一般」(住民税課税世帯で現役並み以外)は4万4400円、「住民税非課税」が2万4600円となっています。 ここで、「現役並み」と「一般」の自己負担限度額が同じことに疑問を持った方もいるかもしれませんので説明します。 高額サービス費の限度額は2017年に「一般」で3万7200円から4万4400円に引き上げられました。このとき、激変緩和措置として、同じ世帯のすべての65歳以上の方(サービスを利用していない方を含む)の利用者負担割合が1割の世帯に、年間上限額44万6400円が設定されたという経緯があります。なお、この措置は2020年7月末で終了しました。 介護改正により、「現役並み」の所得区分が細分化され、高所得者の自己負担額が引き上げられます。具体的には、年収約1160万円以上の利用者の場合の上限は14万100円へ、年収約770万~約1160万円の場合の上限は9万3000円へ引き上げられます。 年収約383万~約770万円の場合の上限は4万4400円と現状維持です。この所得区分は医療保険の高額療養費制度と同じです。高所得者にとって厳しい改正です。