性暴力被害、男性の相談増 熊本県の受付窓口、関係者「件数は氷山の一角」
性暴力被害に遭った男性が、窓口「ゆあさいどくまもと」(熊本市)に相談するケースが増えている。開設された2015年度、男性の相談は3件だったが、19年度は13件。20年度は11月末までで5件に上る。ゆあさいどは「相談は氷山の一角。被害はもっと多いはず」と警鐘を鳴らす。 女性相談員(65)によると、男の子が大人から下腹部などを触られたり、成人男性が別の男性にわいせつ行為を強要されたりするなど被害はさまざまだ。 ゆあさいどは15年6月、県から委託を受けた「くまもと被害者支援センター」が開設。講習を受けた相談員36人が交代で24時間受け付けている。 男性の性暴力被害相談は16年度が1件、17、18年度は各7件と増加傾向。過去最多となった19年度の13件のうち6件は強制的に性行為をさせられていた。13件のうち8件の加害者は女性で、バイト先やSNSで知り合った相手や、同じ学校に通う複数の女子生徒。加害者が男性は4件あり、実の父や兄のほか、養父や継父のケースも。残る1件の加害者は性別不明だった。
相談員は「性暴力の加害者は立場や信頼関係を悪用する。男性も被害に遭うという認識が広まり、相談しやすくなったことが増加した一因」と分析する。 内閣府は17年度、男女計5千人を対象にDVの実態を調査。回答した3376人のうち無理やり性行為をされた経験があるのは164人。うち男性は23人(14%)だった。 ゆあさいどは「性被害に遭ったことを恥ずかしがる傾向は、女性よりも男性の方が強い。女性だけでなく男性へのアプローチも必要だ」と警戒する。県警が17年から20年11月末までに認知した強制性交と強制わいせつ容疑の被害239件のうち、男性が被害者になったケースは11件(4・6%)。強制性交容疑が5件、強制わいせつ容疑が6件だった。 ゆあさいどは、中高大学などで出前講座を開き、性暴力被害の実態を説明。「自分を責めずに、話せることだけで構わないので相談してほしい」と呼び掛けている。ゆあさいどTEL096(386)5555。(鬼束実里、中島忠道)