広陵のボンズ真鍋慧も二岡智宏もこれで力を伸ばした。広陵高の自主練習の秘密
広陵・中井哲之のセオリー・自主練習を重視する
3月18日に開幕する第94回選抜高校野球大会に3年ぶり25度目の出場を決めた広陵高校(広島)。150名に及ぶ部員を束ね、控え選手も一体となって戦うチームをつくり上げる名将・中井哲之の育成術をまとめた書籍『広陵・中井哲之のセオリー』から、その一部を数回に分けて紹介。第2回目は自主練習の重要性についてです。 150名に及ぶ部員を束ね、大家族の父のように本気で怒り、本気でほめて、自ら考えて行動できる個を育てる、名将・中井哲之の育成の法則をまとめた『広陵・中井哲之のセオリー 一人一役全員主役で正しく勝つ法則80』
高校卒業後に選手が成長できる理由
広陵の選手は高校卒業後に伸びるといわれる。高卒ではドラフトで敬遠される180センチに満たない小柄な選手が、大学や社会人で成長してプロ入りするケースが多い。なぜ、卒業後に伸びるのか。その大きな理由になっているのが自主練習だ。 強豪校には珍しく、広陵の練習は短い。平日の練習は2時間から2時間半程度。これは、中井監督が就任してすぐに変えたことのひとつだ。 「僕の現役時代は練習で限界まで体力を使い果たしたんですけど、それをやめました。全員での練習時間を短くして、自主練習をする体力を残すようにしたんです。自分で考えて動く時間をつくりたかったんですよね。やるときは集中してやる。休むときは休む。これでいいのか、練習時間が足りないんじゃないかという不安はありましたけど、練習に強弱をつけて、短時間で内容の濃い練習をさせたかったんです」 長時間練習が短時間練習になり、はじめはラッキーと思っていた選手たちも徐々に物足りなくなってくる。体はまだ動く。練習ができる環境もある。自然と自主練習をするようになった。今ではそれが伝統。全体練習よりも、むしろ自主練習の時間が本番といっていいぐらいだ。 「足りないところをどう補うか。いいところをどう伸ばすか。自主練が広陵の大きな武器ですよね。一人でやるのが一番しんどいわけじゃないですか。一人でやり続けるということが。でも、他の学校に勝ちたかったら、負けたくなかったら、レギュラーになりたかったらやりますよね。それに、熱心に自主練習をしよった人がそれなりの大学に行ったり、プロに行ったり、その先で活躍してる姿を見たら、『自分でやったもん勝ちなんじゃ』という考えになりますよね」 選手たちにとって、限界までやる練習はある意味で楽だ。なぜなら、頭を使わなくていいから。体力的にはきついが、考えなくても時間は過ぎる。ところが、自主練習をするとなれば、自分で何をやるか考えなければならない。自分自身を客観視し、何が足りないかを考える。自分自身の強味を理解し、どうやって長所を伸ばすかも考えるようになる。 「単純にピッチャーなら走るとか、バッターならバットを振るとかになりがちですけど、プラスアルファで何かせんとね。ひたすらティーバッティングをするような、ただ時間を過ごすような練習ではうまくならないですよね。必要なのは、『自分に何が足りないから、どんな練習が必要か』という思考。それがあれば、『監督に言われたからやる』というふうにはならない。監督がしゃべっていたのを聞いたとか、上級生を見て真似をしてみたとか、自分で工夫することが必要。あーせい、こーせいと言われてやる子は広陵で試合に出る子にはならない気がしますね」