“鬼滅缶”で大成長? 3週間で5000万本を売ったダイドーから学ぶ「コラボ成功のヒケツ」
大ヒット中のアニメ、「鬼滅の刃」とコラボ企画を行った企業の決算が徐々に開示されてきた。今期には「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の公開に合わせたコラボ企画が相次ぎ、業績を回復ないしは成長させる企業が現れ始めている。 【グラフ】ダイドーブレンドは“鬼滅缶”で売上急増 そのような状況の中で最も注目を浴びた鬼滅コラボ企業といえば、ダイドーグループホールディングス(DyDo)だろう。同社の中核事業を営むダイドードリンコは、10月5日からダイドーブレンドに計28種の鬼滅キャラをあしらったコラボ缶企画を展開し、これが同社に記録的な売上をもたらしている。 DyDoは、9月の流通チャネルにおけるコーヒー飲料が前年比40.3%減となる大幅な落ち込みをみせ、苦戦していた。しかし翌月から開始した鬼滅コラボでは月次売上が前年比で234.9%にまで上昇し、鬼滅缶は発売からわずか3週間で累計販売本数5000万本を突破した。鬼滅コラボ缶が、同社のコーヒー飲料ビジネス全体を牽引(けんいん)するという現象が起こっているのだ。 市場では、鬼滅コラボが開始された直後こそ株価は無反応だったが、2021年1月期第三四半期決算が公表される1カ月前の10月26日から「鬼滅コラボで恩恵を受けている可能性がある」という期待ベースで株価が上昇を始め、コラボ効果が徐々に株価へ織り込まれ始めた。 そして11月26日に公表された決算では、鬼滅コラボが奏功し、従来予想の5倍となる25億円の純利益をたたき出した。翌日の寄付には前日比で10%を超す大幅高となったものの、その後買いは続かず、直近の株価は5300円程度と軟調に推移している。この株価水準は鬼滅コラボ前とほぼ同水準であり、鬼滅効果は今のところ全戻しとなってしまっている状況だ。
コラボ真の成功は「リピーターの獲得」にあり?
同社が公表したコーヒー飲料の11月分の月次売上高を確認すると、自販機で前年比11.2%増、流通チャネルでは6.8%増にとどまっており、その売り上げが急減速している。鬼滅コラボによる売上増にブレーキがかかったことを嫌気した結果、市場ではこの度の好決算を「持続的な成長」というよりも「一時的な要因」と認識されてしまった。そのため株が手放されるという動きとなったようだ。 現在も“鬼滅缶”の缶コーヒーは販売されているはずだが、なぜ11月の売り上げが伸び悩んでしまったのだろうか。その要因のひとつとしては、鬼滅缶の需要が1カ月程度であらかた吸収されてしまったことにあるのかもしれない。 鬼滅缶のデザインは合計で28種あるが、熱狂的なファンは“大人買い”して一気に全種類を買いそろえても、他のアニメグッズの大人買いと比較すれば懐がそれほど傷まない金額である。また、そこまでの熱量がないファン層であっても、数種類のお気に入りデザインを購入すれば満足しており、追加の購入につながりにくくなっていることが伸び悩みの要因とみられる。 むしろ、鬼滅コラボで増加した売上高が維持できなかったということは、缶コーヒーそれ自体にリピートを促す力がないという点で深刻にも思えそうだ。しかし、9月度に大きく落ち込んだ前年比売上からすれば、現在の水準でも約50ポイント増加しているため、コラボがリピートをもたらさなかったと見るのも早計である。ただし、市場の期待がやや先行しすぎたといえるだろう。