世界経済『静かなる危機』①:中国経済は日本化するか?(上):ダブル・デフレと深刻なディレバレッジ(資産圧縮)のリスク
中国が直面する「ダブル・デフレ」のリスク
中国では、物価の下落と不動産価格の下落とが同時進行する「ダブル・デフレ」の懸念が高まっている。それはバブル崩壊後の1990年代の日本と重なる、との見方もあり、「中国の日本化(ジャパナイゼーション)」も議論され始めている。 中国政府が7月10日に発表した6月消費者物価は、前年同月比横ばいとなった。前月の同+0.2%から一段と下落し、2021年2月以来の低水準だ。また、変動が激しいエネルギーと食品を除いたコア指数の上昇率で見ても、前年同月比+0.4%と前月の同+0.8%を下回り、下落が視野に入ってきた。 また、中国政府が7月15日に発表した6月の主要70都市の新築住宅価格動向によると、全体の54%にあたる38都市で価格は前月比で下落している。半数以上の都市で新築住宅価格が下落したのは、2022年12月以来6か月ぶりのことだ。中古住宅価格も、半分以上の都市での価格下落が2か月連続となっている。 こうした物価上昇率の低迷と不動産価格の下落は、景気の減速傾向と並行して生じている。7月17日に発表された4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%、年率換算で3%強と、成長率が大きく鈍化した。2023年の政府目標である「5.0%前後」の達成にも黄色信号が灯っており、達成できなければ2年連続となってしまう。 中国経済は昨年末のゼロコロナ政策の終了によって一度回復軌道に入ったが、それは長続きしなかった。不動産不況が続く中、個人は新規の住宅購入に慎重であり、それが市況の下落を長引かせている。また、若年層を中心に雇用情勢も悪化した状態が続いており、ゼロコロナ政策の後遺症は予想以上に深刻だ。 さらに、政府が7月13日に発表した6月の貿易統計によると、輸出は前年比12.4%減少と事前予想を大きく下回った。中国は内需の減速に加えて、外需の減速の悪影響も受けているのである。「内憂外患」の状況だ。
中国経済の現状は世界経済の将来を先取りしているか?
多くの国が依然として物価高騰に苦しむ中、世界第2の経済大国である中国では逆に、物価が継続的に下落するデフレのリスクが浮上していることは、かなり意外なことである。それは中国独自の要因によって引き起こされている、と考えるのが自然だろう。 日本、米国、中国の3か国の消費者物価上昇率の動きを比較すると、2000年代後半以降は、中国の物価上昇率が最も高くなる局面も多くみられたが、足元では日本の物価上昇率をも大きく下回り、最下位となっている(図表1)。