佐藤浩市 デビュー当時の撮影現場での厳しさ振り返り「叱ってくれた大人に感謝」
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で上総広常が非業の死を遂げた直後から、SNSでは「#上総介を偲ぶ会」が立ち上がり、いまだに「上総介ロス」という人もいるという。演じたのは、佐藤浩市(61才)。昨年末には歌手デビューを飾り、最新出演作である映画『20歳のソウル』も公開になるなど、60才を過ぎたいまも、新たな活動の場を広げ、注目を集め続けている佐藤にインタビューを行った。【全4回の2回目。第1回から読む】 【写真】ダンディすぎる佐藤浩市の全身ショット
作品もそうだし、人との出会いも大きい
佐藤は昭和を代表する俳優・三國連太郎さん(享年90)の子として生を受けた。父に連れられて撮影所へ行っていた幼い頃に、早くも映画俳優になりたいと思ったという。 1980年、19才のときに、ドラマ『続・続事件~月の景色~』(NHK)で役者デビュー。翌年公開された映画『青春の門』で映画デビューを果たす。 北九州の筑豊炭鉱を舞台に、1人の少年が激しく生きる大人の中で成長し、上京するまでを描いた本作で、主役の伊吹信介役を演じて注目を集めた佐藤は、日本アカデミー賞とブルーリボン賞で2つの新人賞を受賞。それ以後、数々の作品に出演するようになる。当時話題だった映画『敦煌』(1988年)での熱演ぶりも印象的だ。 「当時は撮影現場の雰囲気が厳しくてね。うまくできないと罵倒されるし、さすがに殴られたことはなかったけど胸ぐらを掴まれたことはありました。モラハラとかパワハラといった言葉が社会に浸透してから確かに和やかな雰囲気になって、それはそれで素晴らしいことだと思います。 でも、ぼく自身は“こいつを育ててやろう”という愛のもとに、叱ってくれた大人に感謝しているんです。そういう大人がいてくれたおかげで、ぼくは成長できたと思うから」(佐藤・以下同)
それにしてもすごいキャリアだ。重厚な役からコメディーまで幅広い役柄をこなし、『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(1994年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。その後も数々の賞に輝き、近年では『64 -ロクヨン- 前編』(2016年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、『Fukushima 50』(2020年)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、日本映画に欠かせない名優としての地位を確立してきた。 「運がいいんですよ。1つ終えると次の仕事をいただけるというのは。長く続けることができたのも、長く続ける流れがあったからできたこと。才能とか、努力とか、根性とかいうこと以前に縁に恵まれているというか……。作品もそうだし、人との出会いも大きいし」 とはいえ人の縁は移ろうもの。出会いを育んでいくのは容易いことではない。 「確かに、あんなに親しくしていたのに、気づいたら“最近連絡ないな”とかってこともありますよね。でも、ぼくは縁があれば、どこかでまた引き合うだろうと考えています。仕事もそうですよ。大河ドラマだって18年間のブランクを経て、再び出演することになったわけだから」 三谷監督との縁が濃いということもいえそうだ。『THE有頂天ホテル』(2006年)、『ザ・マジックアワー』(2008年)、『ステキな金縛り』(2011年)、『記憶にございません!』(2019年)と、三谷監督の映画にコンスタントに出演している。 「三谷氏と初めて一緒にした仕事は『新選組!』で、そのときは、NHKのキャスティングでしたが、考えてみれば、偶然の引き合わせこそが縁ですね。三谷氏とは相性がいいというか、ユーモアの感性が一致しているというか。とにかく素敵な巡り合わせに感謝しています」 伏し目がちながら、楽しそうに語る様子から、充実した仕事ぶりが伝わってきた。 (第3回につづく) 【プロフィール】 佐藤浩市(さとう・こういち)/1960年東京都出身。1980年ドラマ『続・続事件~月の景色~』でデビュー。 今年は映画『20歳のソウル』(5月27日公開)のほか、映画『MIRRORLIAR FILMS Season2』内の三島有紀子監督作品『インペリアル大阪堂島出入橋』(公開日未定)、『キングダム2』(7月15日公開予定)、2023年は『仕掛人・藤枝梅安』(4月7日公開予定)も控える。 取材・文/丸山あかね 撮影/森浩司 ※女性セブン2022年5月26日号