妻に子どもを産ませて束縛する「多産DV」の闇…それほど好きなわけでも可愛がるわけでもないのに、子どもを欲しがる「まさかの理由」
新設された「不同意性交罪」とは
2023年7月に性犯罪に関する刑法が改正されて「不同意性交罪」新設された。これは、例え夫婦であっても相手の同意がない(もしくは同意しない意思を形成、表明、全うすることができない)状態で性行為を行った場合は、罰せられるということになる。この場合の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」(*拘禁系とは従来の懲役と禁錮を1本化した刑罰のこと)となる重罪だ。 【マンガ】「一緒にお風呂入ろ」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の罪悪感 「妻の意思を無視した夫の一方的な性行為はすでにDVのひとつと認められていますが、『不同意性交罪』の施行によって、その認識がさらに深まることを願いたいです」 と話すのは、ベテラン保健師の神崎里恵さん(仮名・53歳)である。 産科看護師の経験があり、助産師の資格も持っている神崎さんは、これまでの医療現場での経験や、保健師として大勢の母親の相談に乗った実績から「夫の性加害によって望まない妊娠をして、やむを得ず出産を選択した妻」の存在に大きな危機感を抱いていた。 「妊娠・出産・育児は女性にとってかなりの負担になります。子どもが好きだからとか夫婦仲が良いとか、経済的な心配がないなどの理由があったとしても、心身にゆとりを持って臨めるのはせいぜい3人までです。私が把握している限り、自分から望んで4人以上の子どもを産んだ女性は半数以下でした。それ以外は避妊に失敗したか、婚家や夫に強要されて出産しているケースが目立っていました」(神崎さん。以下同) この「避妊に失敗」という点においても主に夫が非協力的であることが原因であり、妻の意思を無視して性行為に及ぶことで「望まない妊娠&出産」を招いているのだと主張する。 「妻が望んでいないにもかかわらず、避妊せずに性行為をするのは夫による性加害です。実は医療従事者や福祉関係者の間では数年前から『多産DV』という意識が共有され始めています」
聞く耳を持たない夫
一見幸せそうに見える子沢山家庭だが、そこに潜む「多産DV」という闇――。その実態を明かにするべく、筆者は神崎さんの協力を得て、子沢山(子どもが4人以上)家庭に接触を試みた。 取材交渉をしたのは20世帯。取材に応じてくれたのは12件でもちろん幸せな子沢山夫婦もいたが、驚いたことにそのうちの8件の家庭に「多産DV」の疑いがみられた。 以下は「多産DVの被害者である」ことを自ら申告した母親たちの証言である。 まずひとり目。 本間亜紀実さん(仮名・44歳)は昨年5人目の子どもを出産している。 「一番上の子はもう高校生です。思春期のせいか、私の妊娠がわかった時は『イイ年して何やってるの?恥ずかしい』と言われました。実際、お友達にも『アンタの親、まだエッチしてるんだ』とからかわれたようでした」 結婚当初、「子どもはふたりでいいよね。男女ひとりずつなら最高だよね」と話していたという亜紀実さん夫婦は、希望通りの子宝に恵まれたが、数年後突然夫が「もうひとり子どもが欲しい」と言い出したのだという。 「うちは夫婦で商売をしています。夫は店の仕事を口実に家事や育児を手伝わないのですが、私は店・家事・育児の掛け持ちでクタクタでした。にもかかわらず夫はさらに子どもを欲しがり、避妊せずに夫婦生活を続けたのです」 さらに数年後、夫は4人目を欲しがった。 「私はもともと子ども好きでしたし、3人の子どもたちも愛しい存在でした。でもさすがに体力も気力もなかったので嫌がったのですが、夫は聞く耳を持ってくれませんでした」 亜紀実さんは何とか妊娠を回避しようと、夫に内緒でピルを飲み始めるのだが、夫に見つかって捨てられてしまったのだという。 そうして4人目を授かった。