「はみ出た部分をきれいにまとめたくない」下手くそなところを伸ばしていく、名言製造機・菅井の熱血歌唱指導
今の若者は「アウトプット」は上手いが、「インプット」が欠けている
――菅井さんは長年若者と関わり続けていますが、昔と今で変化などは感じていますか。 今の子は、SNSで自分の言いたいことを言ったり、Instagramで自分の日常の生活を出したりと、「アウトプット(自分を見せること)」の機会がものすごく多いです。そのため、人前で物怖じしない、緊張しない子が増えてきたと感じています。 でも、じゃあ投稿している内容はどうなんだろうって思うんです。既存のものを組み合わせていたり、ちょっと変えたものを発信しているだけではないでしょうか。独自性がないアウトプットが多すぎませんか。結局は、単に人への見せ方がうまくなっただけのようにも感じています。 逆に昔の子は、見せ方こそ拙くて分かりにくかったけど、実はグラマラスな子が多かったんじゃないかな。すごく引っ込み思案な子が、ステージに立った瞬間人が変わったようにアウトプットできるようになったり。または、人前に出ることに緊張しているところにも、きらりと光るものがあったりしました。 ――そのほかに、今の若者に対して感じていることはありますか。 今の子は、「インプット(経験)」が劣化しているような気がします。自分に必要な情報や経験だけを選び、それ以外をどんどん排除してきているから、インプット力が弱くなっているのではないでしょうか。 例えば、歌になぞらえてみます。「歌」というものは、喉だけで表現できるわけじゃなく、全身のいろいろな筋肉なども関係しているんですね。そうすると、小さい頃からの体育というものに関わってくるわけです。その体育の中で僕たちは、好きじゃなくても跳び箱をとんだし、バスケや野球や卓球やバドミントンをやらされて、体の運動能力を色々な方法で試してきました。そのような体育、そして音楽、技術、美術を学ぶ時間がカッティングされているんだろうなと、ものすごくあらわに感じます。無駄なことをやってきてない。でも、その時は無駄に思うことでも、実は一つも無駄ではないと思うんですけどね。 ――菅井さんは若者に対して、いつも歯に衣着せぬ本音で接していらっしゃいます。相手に本音をぶつけることに、怖さのようなものはないのでしょうか。 結論から申しますと、本音を言わずに建前だけで生きていて、裏で違うことを思う人間になることの方が僕にとっては恐ろしいことです。