紙でもネットでも。ニュースに欠かせない写真の「今」 (上)

(写真:アフロ)

新聞紙面に初めて写真が登場したのが日露戦争のあった1904年ごろと言われています。活字以外で伝えられる「写真」は報道には欠かせないものとなりました。

そしてそれは、映像メディアが登場し、インターネットが登場した今でも欠かせない、より重要なものになっています。
Yahoo!ニュースと写真の関係は。また、新聞社の写真部がネットの登場でどのような変化をしたのかを聞きました。

調査ではサマリーにヒントが

スマホのブラウザでYahoo! JAPANのトップページを見た際に並ぶ「あなたへのおすすめ」のタイムライン。配信いただいている多くの媒体の記事が並んでいます。2016年3~5月の間、見出しの文字数、サムネイル画像の有無がユーザーのタップ数と関係あるかを調べたデータです。

画像があり、なおかつ30~40文字の長めの文字数の方がタップされるという結果に。短い文字数では画像の有無によりタップされる数に最大約3.6倍の差が出ました。

Yahoo!ニュースのデータ分析を担当している竹田辰彦は調査結果をこう解説します。

「短くてキャッチーな言葉の方がタップにつながるのではと予想していたのですが、文字数の多い方が読まれるという結果に驚きました。
個人の見解ですが、画像があって文字数がある=記事の『サマリー』になっているということだと考えています。


例えば、見出しの文字数が少ない場合、画像があることでタップ数が多くなる傾向にあります。少ない情報を画像が補うため、内容が想像しやすいのではないでしょうか。一方で、文字数が多ければ多いほど画像がある場合とない場合の差は縮まっています。

ユーザーは単に興味をひくような強い単語よりも、記事の内容がなんとなく分かったり、イメージがつく、予測ができる方をタップするようです」。

デザイナーから見た写真とは

ユーザーの目にYahoo!ニュースがどう映っているのかを考えているのがデザイナーです。
Yahoo!ニュースのページビュー(PV)は、一段とスマホシフトが進んでおり、スマホ単体で100億PVの大台も見えてきました。そのため、デザイナーはスマホを中心に「Yahoo!ニュースの見られ方」を考えています。Yahoo!ニュースを支える一人、デザイナーの鈴木まり子は写真をどう捉えているのでしょうか。

「スマホはパソコンに比べてデバイスの幅が狭く、1行に入る文字数が少ないので、同じ文字数でも行数が増えて分量が多く見えます。そうすると、文字が追いにくくなり、読みにくくなってしまいます。
そこに写真があると、この記事が『どんなニュースなのか』とパッと見て理解でき、自分にとって読みたいものなのかどうか、判断を短縮できます」。


デバイスによって画面の幅が違う(写真:アフロ)


「紙で活字を読んだり長文を読む経験があまりないスマホネイティブの世代が増えていくに従って、『視覚的』に理解できることの重要性は今後さらに増してゆくと思います」。

Yahoo!ニュースの記事をスマホのブラウザで見た場合の写真の見え方、印象をどう感じるかを調査したアンケートでも、写真を活用したデザインに対して多くのユーザーが好意的なことが分かりました。さらに、写真を大きく表示することで、ニュースが分かりやすくなったと感じる人が多いという結果も出ています。

新聞社の写真部もネットで変化

新聞社の写真にはどんな変化があったのでしょうか。

毎日新聞東京本社に「写真部」ができたのは1931年5月。2016年で創設約85年になります。その歴史ある「写真部」は、2015年4月に「写真映像報道センター」と名称を変えました。理由はネットのユーザーに向けた動画に対応するため。ネットは新聞社の写真部にどんな変化を起こしたのか、写真映像報道センターの皆さんにお聞きしました。


毎日新聞社内で


「写真映像報道センター」は、ニュースサイトへの編成やネットへ向けたオリジナル記事を書くデジタルメディア局の中に組織したのではなく、新聞紙面を作る編集局の中に組織していることが特徴です。

部員は40人弱。映像ディレクター経験者も採用し、動画に専従する部員もいますが、ほとんどの部員は写真と動画のどちらも撮影しています。動画の編集はグループ会社である毎日映画社のスタッフが常駐し、担当。今までスチール写真しか経験していないデスクも動画を作成できるよう編集の訓練をしました。

カメラマンから締め切りが消えた

毎日新聞は日々、紙面に掲載するより多くの写真をネットに掲載しています。しかし、ニュースサイトを始めた約20年前から積極的に写真を出していたわけではなく、数年前から徐々に意識が変化。今では写真に特化した「MAINICHI PHOTOGRAPHY」というサイトも立ち上げ、TwitterFacebookInstagramといったSNSでも写真を活用した投稿をしています。

その変化の背景には、デジタルメディア局と写真部のコミュニケーションの積み重ねとカメラそのものの技術革新がありました。


佐藤泰則・写真映像報道センター長


写真映像報道センター長の佐藤泰則さんは「見出しだけではユーザーには記事を読まれない、写真が欲しい、さらには早く欲しい、というデジタルメディア局のリクエストがありました」と振り返ります。

「それまでカメラマンは紙面の締め切りに合わせて動いていたんですが、ネットに多く写真を掲載するようになり、締め切りが消えました。今では、早く出そうという意識、『常に締め切り』という意識が定着しています。しかし、ここまできたのは最近の話。やはり時間はかかりました。浸透するまでに2年ほどかかったんじゃないでしょうか」。

山下浩一・写真映像報道部長


「いくら早くと言われてもフイルムだと無理ですからね」。

フイルムからデジタルに移行した技術革新もカメラマンの意識を変えたと分析するのは写真映像報道センター・写真映像報道部長の山下浩一さん。「カメラがフイルムからデジタルに変わり、パソコンを持ち歩いてその場で写真を送れるようになって、カメラマンの仕事スタイルが変わったと思っています。それまで僕らは撮ったフイルムをバイク便に渡すことで仕事を手放せました。今の現場はその日のニュースに使う写真はその場でパソコンでデスクに送り、手放すのが基本動作です」。

1961年にピューリツアー賞を受賞した写真はこのカメラで。
残していたフイルムの最後の1枚だった。

撮らなかったものを撮るように

部員の森田剛史さんは、ネットに多く写真を掲載するようになった背景にカメラマンのある「ストレス」があったと指摘します。
「カメラマンはいろいろな写真を現場で撮っていて、それに対するアウトプットの物足りなさ、欲求不満みたいなものはあったと思います。もっと伝えたいものがある、というのが写真特集を自分たちで作るようになったきっかけです」。

それまでデジタルメディア局が編集していたネット向けの写真特集に加え、サイトのリニューアルに合わせて出来た、写真特集を集めた専用の「MAINICHI PHOTOGRAPHY」も、昨年からカメラマンが自ら編集することも始めました。

写真特集は、担当を決めず、カメラマンがカメラマンの視点で「見せたい写真」を編集しています。

毎日新聞のサイトでは、アクセスの良かった上位10位の記事のうち、毎月半分はこの写真特集がランクインしています。こうした結果も、現場のカメラマンに「写真はユーザーに見られる」という意識を根付かせました。

森田剛史さん


森田さんは、写真特集がカメラマンの写真の撮り方も変えたと話します。
「今までカメラマンはアウトプットが紙面しかなかったので、そこを満たす写真というのをややもすれば考えていたかもしれません。けれど今は写真特集を作るのが頭にあって現場に行きます。1つのニュースに対して、この現場に実はこんなところもあったと多様に見せることができる。今までは撮らなかったものを撮るようになったというのはいい影響だと思います」。

新聞社だからできる「動画」って?

活字での記事と写真で報道してきた新聞社が「動画」でできることとは、どのようなことなのでしょうか。

毎日新聞ではサイトのスマホユーザー増加に伴い、スマホに向けたコンテンツを作成していくことも課題の1つになっています。ただ、難しいのは新聞の読者とネットのユーザー層に違いがあること。佐藤賢二郎デスクはその違いにこそ、新聞社ならではの「動画」のヒントがあるのではと考えています。


佐藤賢二郎デスク


「記者が取材の際に想定しているのが新聞読者で、スマホのユーザーと重なっていないところもあることは認識しています。新聞では大きく扱えないけれど、ネットであれば大きく扱えるものも当然あって、そちらは動画の方がフレキシブルに動けます。テレビ局と同じことをやっても勝負にはならないので、ネットだから積極的にやっていける新聞社ならではのコンテンツ。そういうものとはなんだろうと模索しているところです」。

その1つの成功例に「アダルトビデオ強要問題」があります。あるシンポジウムで被害者が匿名で登場し、自分の体験を話した場面を動画で撮影。短い記事を付けてネットだけのコンテンツとして出すと、多くのユーザーに見られました。

【AV強要 「芸能活動、実は…」被害女性が実態語る


「この証言を紙面に載せる場合、いろんなハードルがあります。『新聞』という枠の中では出せない表現もあり、そうなると、彼女の証言を活字にするのではなく動画で出す方が、よりリアルに被害の生々しさが伝わることになります。

ネットでしかも動画であれば、倫理的な問題をクリアすれば出しやすい。新聞社の信頼度で、アダルトビデオの強要問題は人権侵害、社会問題なんだという姿勢でしつこく出していく。テレビも新聞もやらない、雑誌もあまりやらない。そういうものの例の1つに、このアダルトビデオ強要問題がありました」。

「しつこく出す」はほかのテーマでも徹底しています。2015年は学生団体「SEALDs」のデモを毎週撮影。そのたびに動画をサイトやSNSに投稿しました。

SEALDs奥田愛基さんインタビュー(毎日新聞)

ヘイトスピーチ、沖縄・高江の米軍基地問題、東日本大震災で被災した福島県の原発問題も「しつこく出す」の対象に。こうしたテーマ設定に「しつこく出す」ことを上乗せすることで、このような問題に関心があるコアなユーザーに拡散され、フォロワーの増加にもつながるという考えです。

新聞社ならではの動画に、スライドショーも佐藤デスクは挙げています。「カメラマンが撮影したハイクオリティの写真を並べ、字幕で情報を補いながら動画にする。新聞社の写真というリソースを有効活用できる1つの形だと思っています」。

写真が「従」のハードルは高い

新聞社のカメラマンは海外での仕事も多く、海外メディアとの接点も多いです。海外の新聞社の写真とネットの関係は日本と違うのか聞くと、写真映像報道センターの皆さんは「日本よりかなり先行しています」と口をそろえました。

佐藤デスクは「新聞紙面で写真をどう使うかもそもそも違いますね」と指摘します。


リオ五輪で(写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ)

「海外メディアは、一面ぶちぬきで写真を大きく使うということがあります。そのコンセプトで自社のニュースサイトを作ると、写真も当然大きく、さらに多く使うことになります。日本ではその意味で言うと、いまだに活字の記事が主で写真は従。これは崩せていないと感じています。なかなかそのハードルが高いですね」。

※後編では、別の角度から写真の「今」を探ります。

お問い合わせ先

このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。

この記事をシェア