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落合博満の視点vol.1『外野手ではなく、左翼手、中堅手、右翼手で考える時代』

横尾弘一野球ジャーナリスト
WBCで日本代表入りした平田良介を、落合博満は「ライトの名手」と呼ぶ。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

野球場のスタンドから、あるいはテレビ画面を通したものとは少し違う視点で野球を見てみよう。それがsecond runners’ eyeというタイトルの意味です。しばらくお付き合いください。

野球の世界で慧眼、眼力、独自の視点と言えば、中日ドラゴンズの落合博満・元監督だろう。そんな落合が、10年以上前から言い続けていることがある。

「外野手ではなく、左翼手、中堅手、右翼手と分けて考える時代になったんじゃないか」

そう、内野手が細かく適性を見極められるのに対して、どちらかと言えば外野手はひと括りに考えられることが多く、実際、プロ野球の守備記録もレフト、センター、ライトには分けられていない。

ただ、守備範囲、肩の強さ、打球の判断力、スローイングのクセや球質などを見ていくと、確かに外野手にも適したポジションがあることがわかる。落合はこう言う。

「中日で監督をしていた時の選手を例にすれば、平田良介のライトは上手い。けれど、レフトやセンターはできない。和田一浩の守備は不安だという人もいたけど、レフトなら十分な守備力と肩があった。そうやって外野手にも適したポジション、できないポジションがあるからこそ、英智やGMとして獲得した工藤隆人のように、守備固めにはオールラウンドの外野手が必要になる」

レフトかセンターかライトか、アマチュアも適性を見極めるべき

その見方は、攻撃面にも生かされていた。落合監督時代のある試合だ。優勝を争う球団に矢のようなバックホームで多くの補殺をマークしている右翼手がいた。中日との接戦で代打などを使い、その選手は試合終盤にセンターへ移動した。そして、二死で二塁に荒木雅博を置き、センター前にゴロのヒットが抜けていく。

前進守備で本塁突入はどうかというタイミングだったが、荒木は迷わず本塁へ向かい、姿勢を低くしながらスライディングすると、センターからの返球は三塁側に逸れて決勝点を奪った。

「ライトとセンターでは距離感が違うから、自分の投げやすい体勢で打球を処理できないだろう。しかも、彼の送球はややシュート回転する。ライトからストライク返球する感覚でセンターから投げても、ロケーションが異なる分、セーフになる確率は高いはずだ」

そうした落合の見方を、荒木も三塁ベースコーチも共有しているからこその得点。それが、相手より1点多く取るという落合野球の根底にもあったのだ。

さて、この視点で今春の選抜高校野球大会を見ていると、上位に進出した高校でも、内野手に比べて外野手の守備には「適性かな?」と思える配置が見られた。高校以上のアマチュア球界でも、外野手の守備はレフト、センター、ライトと3つに分けて考えてもいいのではないかと思えた。

また、今季のプロ野球も、レフト、センター、ライトの名手はそれぞれ誰なのか、そういう視点で見てみるのも面白いのではないだろうか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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