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独立リーグでNPB復帰を狙う西岡剛にオファーは来るか?

豊浦彰太郎Baseball Writer
ツインズ時代は攻守に冴えがなかった(写真:ロイター/アフロ)

昨年オフ阪神を戦力外となった西岡剛は独立リーグでNPB復帰の機会を窺っている。プレーぶりは溌剌だ。果たして、NPBの選手獲得期限の7月末までオファーは届くだろうか。

別格の実力

大型連休ど真ん中の5月2日、独立リーグ栃木ゴールデンブレーブスでNPB復帰の機会を窺う西岡剛を観に、茨城県坂東市の岩井球場に足を運んだ。

この日、1番DHで出場した彼は、3打数2安打1四球。力量の違いを見せつけた。ここまで打率も4割台を維持している。果たして、NPBの選手獲得期限である7月末までにオファーは届くだろうか。

1年前も前年オフに巨人を自由契約になった村田修一が同じくBCリーグ栃木に在籍していたが、結局声は掛からず引退を余儀なくされた。

村田はその後巨人にコーチとして迎え入れられたので一概に「干されていた」とは言い難いが、西岡の場合はどうだろう。まだ年齢的にはもう一花十分咲かせることができる34歳だ。阪神を戦力外になった後どのNPB球団とも契約できなかったのは、100%実力への評価の結果だけだったとは言い切れないだろう。

これまでは勘違い?の行動も

彼のここまでのキャリアを振り返ってみると、「ちょっと違うかなあ」と思う部分が少なからずある。

例えばツインズの退団の仕方だ。2010年オフにロッテからポスティングでメジャー移籍を果たした。ツインズとの契約条件は3年総額925万ドルだった。しかし、全く貢献できない2年間を終えると、自ら残り1年間の契約破棄を申し出て退団した。

サラリーを返上したわけなので問題ないだろう、と多くの日本のファンは思ったと思う。法的にもその通りだ。しかし、球団は全く戦力にならない選手に対しても契約した年俸を支払う義務を負っている。いわば、そのリスクも込みの契約なのだ。ならば、選手もその契約を全うするまでは、最大限の努力を継続する義務(法的な意味ではない、敢えて言うなら倫理的に、だ)があると思う。

また、MLB選手組合は西岡の行動を苦々しく思っていたはずだ。彼の場合は、「自国に帰りたい、また今ならそれなりの契約条件をNPB球団から引き出せるだろう」が本音だったと思うが、アメリカの他の選手からすると、「不振のあまり契約を返上した」でしかない。これは、選手組合側からすると悪しき前例になりかねない。そういう土壌が形成される恐れをはらんでいるからだ。西岡も「世界最強の労働組合」であるMLB労組が今までに勝ち取った権利の恩恵に浴していたのだ。その点では、契約返上の申し出は全く問題なしとはしない。

その後阪神と契約したが、2013年の球宴では大阪桐蔭高の後輩である中田翔や藤浪晋太郎をそそのかしてのエセ乱闘など、野球の尊厳を傷つけかなない行為もあった。

故障や不振で期待を大きく裏切った15年オフには、自ら野球協約限度を超える減俸を申し出るという茶番もあった。本人は当時ブームだった「男気」のつもりだったかもしれないが、これも他の選手たちへの影響が考慮されていない独りよがりのスタンドプレーだった。

「元スターだから」と獲得に構える必要はない

冒頭記したように、阪神を戦力外となった彼に手を差し伸べる球団が全くなかったのは、完全なる技術評価だったとは言い切れないだろう。しかし、かつてのスターの姿を大型連休の最中でも観客1000人にも満たない(この日は814人だった)地方球場で見るのは妙にセンチメンタルな気分にさせられたのは事実だ。そのプレーぶりは、真摯に野球に向き合っているように感じられた(当然ではあるが)。

ツインズの辞め方、阪神での立ち振る舞いには賛同しかねる部分もあったが、もう一度チャンスを与えてあげたいと思った。NPB球団側も、「元スターだから」と構える必要はないと思う。年俸1000万円(途中からの加入なので在籍日数に応じた按分で良い)の控え要員で、「使えたら儲けもの、そうでなくても痛くもない」条件で十分だと思う(一軍に昇格できたら在籍日数に応じた歩合支払いとなる)。それが成り立つNPB、社会であって欲しい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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