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ハビエル・アギーレが見たUAE戦。「誇るべき日本の守備組織」と本田、岡崎への言葉。

豊福晋ライター
アギーレは今も日本代表の試合を欠かさずに追っている。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

前日本代表監督のハビエル・アギーレは現在、UAEのクラブ、アルワダの監督を務めている。日本、UAEの双方を知る彼にとって、この試合は特別な試合だった。

かつての指揮官の眼に、2年後の日本代表はどう映ったのかー。

「日本の快勝だった、そう言っていいだろう。日本にとっては、最終予選突破に向けた大きな一歩だ。個人的には、ピッチに2年前の代表選手たちがたくさんいたし、この地で再び彼らの姿を見るのは感慨深いものがあった」とアギーレ。

真っ先に挙がった名前は、先発に復帰しゴールマウスを守った川島だ。

「試合の流れを決定付けた一番のポイントは、あの川島のセーブにあった。エリア内で1対1の状況で打たれたシュートを、彼は見事にセーブした。決まっていてもおかしくないシーンだ。あれで1−1にならなかったことは日本にとって非常に大きかった。あそこで追いついていればUAEはさらに勢いに乗って攻めてきただろうし、スタジアムの雰囲気も変わっていたはず。久しぶりの代表戦だったが、決定的な場面でしっかりと仕事をした川島は讃えられるべきだ」

試合前、アギーレはキャプテンを務めた吉田麻也と連絡をとっている。ピッチに立つ主将の姿は、その目に頼もしく映った。

「オマルのように、UAEは個人技のある選手も多い。しかし日本にはマヤがいた。プレミアで経験を積み、年々成長している。1対1の局面を冷静に止めていたし、素晴らしいパフォーマンスだった。現代表の守備組織を、日本人は誇っていい。よくオーガナイズされているし、CBの前の今野と山口も安定感を与え、両サイドの原口と久保も献身的にサイドの守備に参加する。1点勝負になる予選の試合において、この組織力は日本のストロングポイントだと思う」

アギーレが試合前に繰り返していたのが、“先制点を取った方が勝利を手にするだろう”ということだ。当然ながら、貴重な先制点を奪った久保への評価も高い。

「久保はこのチームの中でいいアクセントになっている。1点目はDFの裏へ完璧なタイミングで抜け出し、一瞬でUAEの守備陣を崩した。シュートは冷静だったし、ベルギーでの好調を代表でも活かすことができた。アシストの場面も足元でなく、今野が走ってくる逆サイドをしっかりと見ていた。日本の右サイドはうまく機能している」

その一方で、アギーレ時代に攻撃の中枢にいた本田や岡崎は、今ではベンチに座っている。世代交代ー。そう囁かれる現状に、彼は首を振る。

「まあ見ていてくれ。本田も岡崎も、これから日本が重要な試合を迎える時、その価値が明らかになるだろう。最終予選の最後の決戦、あるいはワールドカップでのブラジル、スペイン、ドイツら強豪との対戦ー。そういった試合では、彼らの能力、積み重ねた経験、大舞台での強さが、間違いなく活きてくる。彼らは終わったわけじゃないんだ。むしろ、これからその重要性が示されるはずだ」

決定機をしっかりとものにし、守備でも危なげなかった日本。アギーレが感じたのは、日本が成長しているという確信だった。

「日本をロシアに連れていくこと。それが就任時の夢だった。挑戦は志半ばで終わったが、それも人生。いいこともあれば、理解できない不運が降りかかることだってある。重要なのは、その後も日本が順調に成長を続けていること。2年後の日本代表はたくましかった。予選突破の可能性は高いし、これからもさらに進化していくだろう。ロシアで戦う彼らの姿を、ぜひこの目で見たいと思っている」

ライター

1979年福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、ライターとしてのキャリアをスタート。イタリア、スコットランド、スペインと移り住み、現在はバルセロナ在住。伊、西、英を中心に5ヶ国語を駆使し、欧州を回りサッカーとその周辺を取材する。「欧州 旅するフットボール」がサッカー本大賞2020を受賞。

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