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大阪小6女児誘拐も…「荒野行動」等オンラインゲームによる出会い系被害はなぜ起きるのか

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
オンラインゲームがきっかけで出会い系被害が起きている(写真:アフロ)

大阪の小6女児誘拐事件が話題となっている。加害者の35歳の男と12歳の女児がやり取りに使ったのはTwitterのDMだが、知り合ったきっかけとなったのは、人気ゲームアプリ「荒野行動」という可能性がある。女児のTwitterアカウントを見ると、2年前の10歳から荒野行動にはまっていたことがわかる。

実は、高松市の23歳の女が小学6年男児と性的交渉を持ち強制性行の容疑などで有罪判決を受けた事件も、知り合うきっかけはやはりオンラインゲームだったと言われている。こちらも、女が荒野行動のプレーヤーだったことがわかっている。荒野行動などのオンラインゲームが出会い系被害につながる理由と危険性について解説する。

スマホで遊べる10代に人気のゲームアプリ

荒野行動は、中国のNetEaseGamesが開発・運営するオンラインバトルロワイヤルゲーム。ヘリコプターからパラシュートで降り立ち、武器や防具を調達して、100人の中の最後の1人まで生き残ることが目的だ。開発会社によると、全国に累計2.5億人のプレイヤーがいるという。

10〜30代ユーザーを対象としたTesTee Labの「【2018年秋】ゲームアプリに関する調査」(2018年10月)によると、「もっともハマっているゲームアプリランキング」で荒野行動は3位にランクイン。特に10代男性では12.7%で1位、10代女性でも6.4%で3位になるなど、10代に高い人気を誇っているのだ。

スマートフォンでも遊べる上、YouTubeのゲーム実況などでも人気が高いこと、友達と集まってプレイしたり、離れた友人と話しながらプレイができる点が10代にうけていると考えられる。

出会い系に使われている「荒野行動」

荒野行動は、「出会い系に使われている」と言われることが多い。

10〜20代を対象としたTesTee Labの「荒野行動に関する調査」(2018年11月)でも、「SNSで一緒にプレイする人を探してからプレイする」が14.7%いる状態だ。

荒野行動ではもともと、2〜5人のチーム戦もできるようになっているため、複数人で遊びやすいのだ。それ故Twitterでは、「#荒野行動フレンド募集」「#荒野行動してる人と繋がりたい」などのハッシュタグで、フレンド募集のためIDを公開している人が多数見つかる。

「#荒野女子」などのハッシュタグで検索すれば、女性プレイヤーも見つけることができる。Instagramでも「#荒野行動」は14万件投稿されており、プレイ動画とともに、女性プレイヤーの自撮り写真が多く投稿されている状態だ。

荒野行動ではもともと男女でカップルになれるシステムがある。さらに、サービス開始2周年を迎え、「結婚」システムが導入されることがわかっている。同ゲームのプレイヤーのある女子高生は、「出会い厨は多いと思う。出会い系メッセージは何度ももらったことがある」と言う。フレンドになった相手から頻繁に「会いたい」というメッセージが来たことがあるそうだ。

ボイチャできるオンラインゲームに注意

Switchでも、最近はボイスチャットで話しながら遊べるものが多く出ている。子どもたちは友達同士で時間を決めてログインしてプレイして遊んでいるのだ。

実はそれだけではなく、ゲームタイトルのハッシュタグでTwitter内で友達を募集している例を多く見かける。ある小学生男児は、知らない大人とプレイしている時に、学校名や学年、好きな野球チームなどを教えてしまい、親に叱られてしまったそうだ。

ボイスチャットで話しながら一緒にゲームをすると、共通の体験によって心を許してしまい、相手と親しくなった錯覚に陥るだろう。今回の事件でも、容疑者の男は女児を「別の女の子のオンラインゲームや話し相手になってくれないか」と誘いだしたという。容疑者の男と女児はゲームを通して親しくなっており、それ故Twitterでの誘いに乗ってしまった可能性があるのだ。

ただし、ボイスチャットで話しながらプレイするゲームでも、顔見知りの友達などとプレイするだけなら問題は起きづらい。ゲームを禁止するのではなく、知らない相手と気軽につながるリスクを子どもに教えてほしい。

なお、もともと荒野行動はバトルロワイヤルゲームという殺し合いをするゲームであり、アプリ自体もApp Storeで「17+(17歳以上対象)」、Google Playで「16+(16歳以上)」というカテゴリーになっている。対象より低年齢の子どもには、違うゲームをすすめるとよさそうだ。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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