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バスケット男子日本代表に喝! 元全日本監督は言う「東京五輪を逃してもいいのか!」

林壮一ノンフィクションライター
「まるで怖さがない」と元全日本監督に評された現代表チーム(写真:松尾/アフロスポーツ)
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 FIBAワールドカップ、アジア地区第1次予選において、日本代表は初戦のフィリピンを71-77、第2戦のオーストラリアを58-82のスコアで連敗した。第3戦は来年2月22日にチャイニーズ台北を相手に行われる。

 「ホスト国であるというのに、このままでは2020年東京五輪の出場が危うい。情けなくて見ていられない」と語るのは元全日本監督、吉田正彦氏である。

 吉田氏は1941年生まれの76歳。日本代表選手として1964東京五輪に出場。72年ミュンヘン五輪、76年モントリオール五輪には、全日本の監督として指揮を執っている。その彼をインタビューした。

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 FIBAワールドカップの出場国は32、アジアからは最終予選を勝ち抜いた7チームが参加できます。現在1次予選で戦っている4チーム中、3チームが2次予選に駒を進めます。ビリにならなければいいのですが、日本と台北の実力はイーブンでしょう。その後、アジア7つの枠を争う力が、今の全日本には無いと私は思います。

 Bリーグのシーズンと国際試合のスケジュールが重なっていることがいただけませんね。今回のアジア予選に向け、日本代表は週2回の強化合宿を17回やったそうです。でも、それではまったく足りません。私が日本代表の監督だった頃は、年間145日の合宿を行いました。背が低く、ジャンプ力も無く、スピードにも欠ける日本人選手をアジアで勝てるようにするには、連係プレーがどうしても必要です。そうした強化をしたからこそ、アジア王者として五輪に出場できました。

 フィリピン戦をご覧になりましたか? フィリピンのセンターは元NBA選手で帰化して国籍をとっています。今日、FIBAは12名のナショナルチームメンバーのうち、1名の帰化選手を認めています。日本は、アメリカ出身のアイラ・ブラウンに日本国籍をとらせて代表選手にしましたが、193センチしかなくセンターで使えません。彼はあくまでもフォワードの選手です。ゴール下の制空権を争うタイプではない。

 高さの無い全日本が海外と渡り合うには、210センチクラスのセンターを獲得しなければいけない。リングを背にして戦える選手がいなければ勝ち目はありません。それに、ブラウンのような実績の選手ではなく、NBAでプレーした猛者が必要なのです。

 フィリピンは国の強化を理解していますね。Bリーグでは、ほとんどのチームがセンターに外人選手を起用していますが、どの選手もNBAではお呼びがかからないレベルです。ハッキリ言いますが、質が悪い。

 日本代表を強くする為には、NBAからセンターを獲得し、帰化してもらうように努力すべきです。「センターがいないから、補充せざるを得ない」という働きかけをFIBAにしなければいけません。

 ロンドン五輪の際、当初FIBAは英国の出場を見合わせていました。が、“努力する姿”を評価し、最終的に出場させたのです。今、日本代表が東京五輪に出場したところで、ダントツのビリになるのは目に見えています。「試合にならない」と判断されているんですね。

 

 日本代表のパスは、3ポイントラインの外側ばかりです。パワープレーでリング下まで攻撃する術がない。そんな状態で80回もボールが回っています。1対1で抜けない。ゴール下にボールが入らない。相手ディフェンスを破れない。それが日本のウィークポイントです。

 ポイントガードの富樫勇樹は動いていますが、ゴールから遠い位置ですから怖さが無いんです。しかも相手ディフェンスを引き摺ったままシュートを打っているので、入らない。そのうえ、彼にはディフェンス力がまるで無い。要するに日本人選手は、ボールをもらう技術を身に付けていないのです。まず、センターのいい選手をNBAから探し、帰化してくれるように働きかけなければ、手遅れになりますよ。もっと危機感を持たなければ、日本のバスケット界に明日はありません。

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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