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「日本の恥」世界に発信、自民・杉田水脈議員―米国、英国、フランスの有力メディアが報道

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
自民党本部前で行われた杉田水脈議員の辞職求めるデモ。 LGBTに関する寄稿に抗議(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 自民党の杉田水脈参議院議員の性的マイノリティー当事者への差別的な発言が、国内のみならず海外でも報じられている。かねてから問題発言の多い杉田議員だが、彼女の言動を咎めない安倍政権の姿勢も海外報道では言及されている。

〇米国やイギリス、フランスの有力メディアが報道

 問題の発言は、今月18日発売の「新潮45」(新潮社)に「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題した寄稿の中で主張されていたもの。同性愛者等の性的マイノリティー(LGBT)のカップルのために税金を使うことを疑問視した上で、「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と、杉田議員は書いている。彼女の主張は、自民党本部前で今月27日、LGBT当事者やその支援者ら5000人が抗議するなど、国内での反発を招いた他、国外のメディアでも、その言動が報じられる事態となっている。

 米国の大手テレビネットワークCNNは、杉田議員のLGBTについての発言を今月26日配信の記事で取り上げた。杉田議員が反LGBT発言を繰り返してきたことや、「安倍晋三首相は今年9月の総裁選に勝つことを優先して、杉田議員の発言について党内で論議することを好まない」とのテンプル大学のジェフ・キングストン博士のコメントを紹介している。

 英有力紙インディペンデントも、今月26日付けの記事で、杉田発言を報じた。同紙は、自身も同性愛者であることを公表している、東京都豊島区議会議員の石川大我氏のコメントを紹介。石川議員は「2020年の東京オリンピックに先立って、杉田議員の発言は日本の評判を著しく損なう」と述べた。またインディペンデント紙は、自民党の二階俊博幹事長が「いろいろな考え方の人がいる」として、杉田議員の発言を問題視していないことも取り上げた。

 フランスの有力紙ルモンド紙も、今月30日付けの記事で、杉田議員の発言を「与党議員による“ヘイトスピーチ”」として、取り上げた(該当記事)。同紙は、今月27日の自民党本部前での杉田議員への抗議活動も紹介。「杉田議員の発言は、私達に生きる権利はないと言っているようなもの」という、抗議活動に参加した同性愛者の女性の声を伝えた。

〇英BBCが報じた「日本の恥」

 杉田議員の発言が、海外メディアに問題視されることは、今回が初めてではない。英公共放送BBCは、今年6月28日、「安倍首相に最も近いジャーナリスト」、山口敬之氏からの準強姦被害を訴えた伊藤詩織さん*を中心に、日本の性暴力被害者の状況を伝える特集を放送した。BBCの取材班は、杉田議員にもインタビュー。杉田議員は、伊藤さんについて、「彼女の場合はあきらかに、女としても落ち度がありますよね。男性の前でそれだけ飲んで、記憶をなくしてっていうようなかたちで」とセカンドレイプ発言。また、「セクハラは社会に生きていたら山ほどある」と、あたかもセクハラを我慢できなかったり、かわせなかったりする女性達の方に問題があるかのように語っていた。その後、杉田議員は、「BBCに発言を切り取られた」と番組を批判したが、伊藤さんを誹謗中傷するツイートを連投するなど、むしろ「性暴力被害を告発すると叩かれる日本社会」というBBCの問題提起を補強する行動をとっている。

*本件で山口氏は不起訴とされている。ただし、逮捕状が出ていたのに、菅義偉内閣官房長官の元秘書官で、当時、警視庁刑事部長であった中村格氏の「鶴の一声」で山口氏の逮捕が急遽取りやめになるなど、本件の経緯には不透明な部分が多い。

〇自らの首を絞める杉田議員のロジック

 安倍首相を除けば、杉田議員は今や、国際ニュースで最も有名な日本人議員と言えるだろう。非常にネガティブなかたちで、その「生産性」を発揮してしまっているのである。「日本という国家に有益でない人物には、税金を使う必要はない」という杉田議員のロジックにあえて乗るならば、世界中に「日本の恥」をさらしている杉田議員自身が、議員歳費その他、自身の活動に関する公費を全て返納すべきだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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