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「待機児童なんて一人もいない」炎上の自民・杉田議員「保育園で洗脳教育」「男女平等は反道徳の妄想」とも

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
大炎上した杉田議員のツイッターでの投稿。

 自民党の衆議院議員・杉田水脈氏(すぎた・みお/比例・中国ブロック)の発言に、SNS等での批判が殺到、炎上状態になっている。発端は、「待機児童などいない」との杉田議員のツイッターでの保育園に関しての投稿。杉田議員はその後、ツイッター上で弁明したが、「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」等の女性の社会進出に反対する杉田議員自身の過去の発言もあり、その弁明に説得力はなく、自民党が掲げる「女性が輝く社会の実現」の実態を晒したかたちだ。

 杉田議員は、昨秋の衆院選で「日本のこころ」から自民党に鞍替えして当選したが、その背景には安倍首相が「杉田氏は素晴らしい」と絶賛したことがあるという。女性の社会進出に反するような発言を繰り返す人物を身内に取り込んだ、安倍首相自身のスタンスも問われている。

◯世の中に「待機児童」なんて一人もいない~杉田議員の暴論に批判殺到

 杉田議員の問題のツイートは、今月24日に投稿されたもの。

 この杉田議員の投稿にツイッター上で多くの人々が猛反発。杉田議員に憤るツイートが次々に投稿された。

「母親が働かないと生活できないような政治をしているのは貴方達でしょ。共働きが主流の今何を言ってるんですか?こんな発言をするなら共働きでなくても成り立つ世の中にして下さい。あと親だけが保育所を必要としてる訳ではありません、私の息子は一時保育で通っていますが保育園がとても大好きです」

https://twitter.com/Lilou1017J/status/956755611496034307

「私も息子を1歳から預けています。私の妻は自分で育てることを望みましたが、様々な事情で辞めることはできません。親の選択の余地がないのは制度上の問題だと思います。その制度を構築するのが議員の仕事ではないですか?子どもの視点を考えるのであればぜひ形にして下さい。具体的な政策を求めます」

https://twitter.com/n_akio_sr/status/956501544735719425

「子供がいるお母さんは仕事すんなって暴論 ほんと辟易します」

https://twitter.com/thomasmathiew16/status/956669324172845056

 これに慌てたのか、杉田議員はその後、「私は預ける親が悪いとは一言も言っていません。自分もゼロ歳児(実質1歳)から保育所に預けて働いてきましたので」とツイートしたが、さらなる反発を招くことに。「自分に『言葉足らず』という瑕疵があり他者を傷つけた可能性があるなら、それについてお詫びをされるべきではないでしょうか」「何が言葉足らずだ。議員やめてほしいわ」との批判が殺到した。

◯「保育園で洗脳教育」、常軌を逸したトンデモな主張

 保育園をめぐっては、杉田議員は、過去にも、トンデモ発言をしている。議員として落選中の2016年7月4日、産経新聞に"「保育園落ちた、日本死ね」論争は前提が間違っています 日本を貶めたい勢力の真の狙いとは…”というコラムを寄稿。その中で、保育園の拡充を求める世論の動きについて、

 前述の「朝まで生テレビ」において、多くの女性論客は「保育所を義務化すべきだ」と主張しました。残念ながらこの主張は多くの日本人女性に支持されています。その背後に潜む大きな危険に誰も気づいていないからです。

 子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしているわけです。

出典:産経新聞

 と、左派勢力(コラム中では「コミンテルン」と表現)の陰謀だという珍説を展開した。あまりにも異常かつ事実ともかけ離れた言説を掲載する産経新聞も呆れたものだが、このコラムは、自民党の衆議院議員として国会に杉田議員が復帰した今でもウェブ上で掲載されている。

◯「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」

 保育園のみならず、杉田議員は、日本の女性の権利そのものを否定したいかのようだ。杉田議員は「次世代の党」所属時の、2014年10月31日衆院本会議で、「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」とまで言い切っている。

 本来日本は、男女の役割分担をきちんとした上で、女性が大切にされ、世界で一番女性が輝いていた国です。女性が輝けなくなったのは、冷戦後、男女共同参画の名の基、伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等を目指してきたことに起因します。男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です。女性にしか子供を産むことはできない。こんな当たり前のことに目を背けた政策を続けた結果、男性ばかりか当の女性までが、女性にしか子どもが産めないことをネガティブにとらえる社会になってしまいました。

 その結果、ドメスティックバイオレンスが蔓延し、離婚が増加。少子化や子どもの貧困の原因となっています。次世代の党は、この男女平等参画基本法という悪法を廃止し、それに係る役職、部署を全廃することが女性が輝く日本を取り戻す第一歩だと考えます。

出典:衆院本会議

 まるで、女性が外で働くことを禁じたイスラム原理主義者のような発言で、もはや論評に値しない程に異常かつ、現代の日本社会の価値観からはかけ離れた極論だろう。杉田議員の政治スタイルは、保守・右派よりの極論をぶち上げることで、一部の極右層に訴えるというものだが、問題は、そうした人物を、安倍首相が自民党、しかも自分の息のかかった派閥に取り込んだことだ。

◯杉田議員は安倍チルドレン、問われる安倍政権の「女性が輝く社会の実現」

 杉田議員は、昨年秋の衆院選で「日本のこころ」から自民党へと鞍替えした理由として、保守・右派の立場からの言論活動で知られる元アナウンサーの櫻井よしこ氏の熱心な働きかけがあったと自身のツイッターで書いている。そして、その櫻井氏はネット番組『言論テレビ』の中で、「安倍さんが杉田氏は素晴らしい」と杉田議員の鞍替えの内幕について語っている。実際、昨秋の衆院選の最中、安倍首相の地元・山口県での自民党の集会に、首相夫人の安倍昭恵氏と共に参加している。

 また、杉田議員は、現在、自民党の中でも、安倍首相の出身派閥で現在も深い関係にある「清和政策研究会」に所属している。杉田議員は正に「安倍チルドレン」だと言えるだろう。

 上記したような杉田議員の言動が、安倍政権の掲げる「女性が輝く社会の実現」の建前に、真っ向から反することは、誰の目にも明らかだ。そのような言動を繰り返す女性議員が「首相のお気に入り」として、自民党の最大派閥に居座っている。それが、世界各国の男女平等の度合いを示したジェンダー・ギャップ指数114位(世界経済フォーラムまとめ・2017年)という、安倍政権の「女性が輝く社会」のお粗末な実態なのだ。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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