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「新しい地図」香取慎吾、WACK渡辺淳之介、そして権八成裕という異色3人の接点は

篠田博之月刊『創』編集長
左から権八さん、香取さん、渡辺さん(筆者撮影)

 ここに掲げた写真は、「新しい地図」の香取慎吾、WACK社長兼プロデューサーの渡辺淳之介、そしてクリエイティブディレクターの権八(ごんぱ)成裕の3氏だ。いずれもこの何年か、チャレンジングな表現活動を行ってきた異能の人たちだが、この3人が1月7日発売の月刊『創』2月号で座談会(鼎談)を行った。「新しい地図」の活動については何度か『創』で取り上げてきたが、香取さんが直接、誌面に登場するのは初めてだ。

 「新しい地図」の3人はこの年末年始、地上波のテレビに一気に登場した感があるが、WACKの渡辺淳之介さんも2019年は「水曜日のダウンタウン」などで話題になった。この2人の接点ともいえるのが権八さんで、彼は「新しい地図」にも関わり、香取さんのファミマのCMを手がけ、そしてWACKの広告も手掛けてきた。そしてこの1月に発売された香取さんの初アルバム「20200101」(ニワニワワイワイ)に作詞で関わっている。 

 その3人がアルバム制作をめぐる裏話や、それぞれの活動について語り合ったのが、この座談会だ。3人の接点というのはそれ以外にもいろいろあるのだが、ここで少し紹介する。例えばここに掲げたのはご存知ファミマのCMだ。香取さんのこのシリーズは大きな反響を得ているのだが、そのCMを作っているのが権八さん。

ファミマのCM「慎吾母」(権八さん提供)
ファミマのCM「慎吾母」(権八さん提供)

 で、座談会ではこう語っている。

《権八 僕たちのつながりということでは、僕がプランニングして慎吾くんに出ていただいているファミリーマートのCMはもう2年目ですね。おかげさまで大好評で。「お母さん食堂」で慎吾くんが、こんなに食べるのが上手なのに、「慎吾母」と言って料理を出す側に扮してもらったんですが(笑)、食べ手を元Bisで淳之介くんの事務所にいたファーストサマーウイカちゃんがやってくれた。そのCMがすごく面白く出来て、ここもつながったっていうか、偶然だったんですが。

渡辺 そうそう。》

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ファーストサマーウイカさん(権八さん提供)
ファーストサマーウイカさん(権八さん提供)

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 この元Bisで淳之介くんの事務所にいたファーストサマーウイカちゃんというのが写真の人で、この1~2年、バラエティやワイドショーなどにひっぱりだこの女性だ。

「自由にものが言えない不寛容な世の中」

 ここで権八さんがWACKでやっている仕事を紹介すると、渋谷で展開したキャンペーン「○○と言える世の中を。」だ。権八さんのコピーがすごくいい。

渋谷でのWACK広告(権八さん提供)
渋谷でのWACK広告(権八さん提供)

 《いつからこんなに自由にものが言えない不寛容な世の中になったんだろう。発言した人を関係ない第三者が正義をかざしてバッシングする。そんな炎上を恐れて人も企業も萎縮して当たり障りないことしか言えなくなっている。私たちは音楽の力で、そんな世の中に風穴を開けたいと本気で思っています。(以下略)》

「表現の不自由展」中止事件など、2019年も「表現の自由」に関わるいろいろな事件や問題が起きたが、「自由にものが言えない不寛容な世の中」に音楽で風穴を開けようというキャンペーンだ。

 

香取慎吾さんの初アルバムに権八さんと渡辺さんが参画 

 さて3人の座談会だが、こんなふうに始まる

 《権八 慎吾くんの初アルバム「20200101」(ニワニワワイワイ)が1月1日に発売になるのですが、僕も渡辺くんも関わっているので、それぞれの仕事や関わりについて話してみたいと思います。僕はもともとプランナーとして慎吾くんたちの「新しい地図」にも関わってきたけれど、一方で渡辺くんの会社WACKのお手伝いをしたり、その所属のBiSHのプロモーションビデオを作ったり、あとGANG PARADEのプロモビデオを作ったりしてきました。さかのぼると「新しい地図」の「クソ野郎と美しき世界」の映画を作った時も、もしかしたらミュージシャンとして、いいんじゃないかみたいな感じで、渡辺くんのことを提案したように記憶しています。

香取 えー、そうなの? 全然覚えてないけど。

権八 どこで却下されたか覚えてないけど(笑)。その後、全然関係なく、慎吾くんがどこかでBiSHを聞いてラジオで話してくれた。

香取 そうですねー。いろんなミュージックビデオが勝手に流れていくのをよく家でつけているのでそこなのか、あるいは深夜の歌番組とかテレビとかでたまたま見て、そこからちょっと気になっていくと検索して、ということだったか。まず引っかかったのが、みんな顔に泥まみれみたいな…。

権八 BiSHの「BiSH-星が瞬く夜に-」ってデビュー曲ですね。顔が泥まみれ。ひどいビデオです(笑)。

香取 あんまりひどいとは思わなかったですけどね。でもやっぱりインパクトは感じたんだと思う。だから、アイドルの女の子たちのグループってたくさんあると思うけど…でも何て言うんですか、BiSHはアイドルですか。

渡辺 「楽器を持たないパンクバンド」と言わせてもらっています。

香取 なるほど。僕が最初見たときは、アイドルの女の子たちのミュージックビデオなのに、こんなインパクトがあるんだと。そこから気になって検索していくと、アイドルじゃない。どういうこと?みたいな感じで食いついていきました。それでラジオで紹介させてもらったんです。

座談会を行う3人(筆者撮影)
座談会を行う3人(筆者撮影)

渡辺 そうですね。ラジオでかけていただきました。

権八 ラジオでは何をかけたんでしたっけ?

渡辺 その時はBiSH「BiSH-星が瞬く夜に-」でしたね。

香取 それでAbemaTV「7・2(7・2新しい別の窓)」の番組にも来てもらえたらと。

権八 そこから1年くらい時間が経ちましたよね。

香取 そんなに経ってるんだ。じゃあ早く来てもらいたかったけど、淳之介さんが NG だったということ?

渡辺 いやそんなことはないですけど(笑)。

――結局、今回のアルバムの話では権八さんが繋いだということ?

権八 アルバムの話は、僕は関係なく、直接オファーをしたんですね。

香取 そうです。そしたら権八さんが知り合いだった。権八さんはいろんなところに登場するんですよ。それこそBiSHがAbemaの「7・2」に来てくれた時にも来てて、「何で権八いるの?」みたいな(笑)。普段来ないような現場になんでって言ったら、実は知り合いなんだって。

渡辺 「隙を見てちゃんと紹介してあげるから」という、権八さんの優しさで来ていただいたんです。

香取 BiSHに曲を頼んだのと「10%」の歌詞を権八さんに頼んだのってどっちが先かな?

渡辺 BiSHに曲を頼んだ方が先。

権八 「10%」というのは、消費税が10%になるというのをテーマにした僕が歌詞を書いた歌で、今回のアルバムにも入っているんですが、僕のところに話が来たのが9月。10月1日の消費増税までに頼みますと、めっちゃギリギリに来てましてね。

渡辺 本当にギリギリで書いたんですね。

権八 いつもそうだけど(笑)。

香取 もう何十年いつもこうなんだけど、今回もこうなるとは思っていなかったですね。

権八 僕は別にいつも通りでした。いつも通りって言ったらおこがましいけど(笑)。

香取 でも「新しい地図」って言っても、この2年間、進み方としては新しくはないですよね。本当は、もう1回ゼロになってスタートしようと思ってたぐらいだから、海外に行って次の作品を考えたりとか、ゆったりとしたいつの日かこんなことができたらなと、時間が余るぐらいと思ってたら、とんでもない。

 でもこの2年間で、やりたかったことが一気にできてるということは、それまでと同じスケジュール感で動いてるってことですよね。

権八 SMAP時代に比べても、この2年間がもっと忙しいってことはない?

香取 いや、もっとまではいかないかもしれない。それ以前は、やっぱりレギュラーの番組とかがあったのを考えると、生放送も含めて週5日間は、毎週番組の収録だったり生放送して、それにプラス今やっているのと同じぐらい他のこともやってたから。それが今はないぶん時間があると言えばある感じだけど、動いているスピード感はもう20代の頃よりも忙しいんじゃないかっていう感じ。今が人生のピークかというくらいですね。

権八 でも今は、絵を描いてる時間とかが、その頃より増えてるんじゃない?

香取 大きな違いは、自分で任せられて動くことが多くなったことですね。

権八 自己責任と言うか、自分が主体的にね。

香取 それはそれで大変は大変なんです。絵を描く依頼とかを頂いても、締切があって、大きい作品だと大きい倉庫を借りてそこに通ったりしている。家で描けるぐらいの大きさだと、自分の時間はできるんだけど、マネージャーさんが迎えに来るわけでもないし、いつスタートするわけでもないし。

 それまでは大体マネージャーさんが迎えに来て、現場に行って、メイクして衣装に着替えてやるっていうのが基本だったけど、そうじゃないことが増えてきた。そうすると自分でいろいろなことを決めていかないといけない。権八さんの仕事はそういう感じじゃないですか。僕の場合は、出発ですとか電話が来てっていうのが基本だった。だから自分で「よし」と思わないと始められない。僕はそれにこの2年ぐらい困ってた。最近は、ペース配分がだいぶわかってきたけど。》

 香取さんはこの1年、アートの個展を行うなど、これまでと違う領域に進出したりしたのだが、SMAP時代と今の仕事ぶりが具体的にどんなふうに変わったのか話していて興味深い。

 関心のある人はぜひ原文をご覧いただきたい。

[ www.tsukuru.co.jp/]

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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