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TWICE“パクリ”疑惑論争の前に知っておきたい韓国におけるAKB48の影響力

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国でもAKB48は有名で参考になっている。(写真:ロイター/アフロ)

K-POPのガールズグループTWICEが好調だ。

例えば6月28日に発売された日本デビューベストアルバムは、発売から約4カ月経った9月にもオリコン・デイリーアルバムチャートのトップ10にランクインしており、彼女たちの人気を証明している。

8月30日に発売されたAKB48のニューシングル『#(ハッシュタグ)好きなんだ』を巡っても、なぜかTWICEに関心が集まったそうだ。同曲を巡っては、日本のネット上で双方のファンたちが局所的な論争を繰り広げたという。

何が論争になっているのか。例えばタイトルに付けられた「#」や同曲のダンスに取り入れられている「#ポーズ」が、TWICEの“パクリ”なのではないかとネット上で物議を醸した。

ちなみに6月28日に発売されたTWICEの日本デビューアルバムのタイトルは『#TWICE』であるし、同アルバムのプロモーション活動の際にはTWICEが「#」を形作ったポーズを取っていた。韓国メディアが追いかけてきたTWICEの成長の軌跡にも、それは確かにカメラが納めている。

(参考記事:写真56連発!! 韓国人気ガールズグループ「TWICE」の成長の記録〜デビューから現在まで)

ネット上ではAKB48はTWICEよりも先に「#ポーズ」を行っていたという反論も上がっており、いまだ論争は冷めやらない様子だが、一つ付け加えるとすると、こうした状況の裏で実は韓国のアイドル業界ではAKB48を想起させる現象がいくつか続いていることである。

“ママ”と自称して推しメンに投票するファン

例えば、韓国で人気急上昇中のアイドルオーディション番組だ。

『プロデュース101』や『アイドル学校』といったオーディション番組がそれで、番組に影響を受けた女子高生たちが美容整形を行なう“オーディション整形”まで流行っているのだという。

特筆すべきはこうしたオーディションの形式の番組では、アイドルとしてデビューするメンバーや途中脱落者たちを視聴者投票によって決めていることだろう。

それはさながら“AKB総選挙”の様相と似ており、AKB48のファンと同様、投票権(投票ID)を大量に手に入れて複数投票をするファンもいるらしい。

韓国メディア『蔚山総合日報』も、「『アイドル学校』、日本の国民的アイドル“AKB48”みたいだが?」と見出しを打った記事で、「投票を通して番組に出演できるメンバーを選ぶサバイバル形式は、日本のAKB48の“総選挙”を思い起こさせるという疑惑を投げかけられている」と報じている。

 

ただ、韓国のファンたちは、自身のことを“ママ”と呼んで特定の候補生をどうにかデビューさせようと躍起になっているという話もあるので、見方によっては韓国版“総選挙”のほうが過熱していると言えるかもしれない。

(参考記事:韓国版“AKB総選挙”はもっと過激!? “ママ”と自称してアイドルを管理するK-POPファン

 

韓国に伝播した“AKB商法”

また、K-POPアイドルのCDの販売方法もAKB48に酷似している。

韓国では“CD離れ”が叫ばれて久しく、日本以上にCDからオンライン配信へと音楽利用手段が移行していると言われている。

しかし、奇妙にもCDの売上自体は伸びており、『東亜日報』が伝えたところによると、昨年には2011年の調査開始から初めて総売上枚数が1000万枚を突破したらしい。

この事態は、アイドルのCDが爆発的に売れていることに起因しているという。前出の『東亜日報』の報道によれば、CD売上総数の中でアイドルのCDが占める割合は94.3%に上っているそうなのだ。

そして、アイドルのCDがそれほど売れている理由には、特典目当てのファンを狙った、いわゆる“AKB商法”が韓国に伝播したことが原因だという指摘も少なくない。CD市場の日韓比較を見ても、“AKB商法”が浸透していることがよくわかるぐらいだ。

AKB48を見る韓国の視線

このように最近のK-POPアイドルは、AKB48がつくりあげてきた様々な手法をなぞっているようにも見えるが、その背景には、韓国でのAKB48の知名度が高いこともあるだろう。

実際、元NMB48の須藤凛々花が今年6月の“総選挙”の場で結婚宣言をしたときも、韓国のメディアとファンは猛烈に反応していた。

(参考記事:「日本のファンは異常」AKB48総選挙での“結婚宣言”を見る韓国メディアとファンの視点

韓国のアイドル業界への影響や今回の「#ポーズ」騒動を見る限り、AKB48の存在感がますます大きくなっていることは間違いなさそうだ。

今後も彼女たちは韓国のアイドル業界に影響を及ぼしていくのだろうか。引き続き動向を追っていきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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