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ジョニー・デップの元ビジネスマネージャー、DV疑惑を蒸し返す:「複数の使用人に聞いて知っている」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今年1月、ピープルズ・チョイス賞を受賞し、人気を再証明したジョニー・デップ(写真:Shutterstock/アフロ)

アンバー・ハードによる突然の離婚申請から、ほぼ1年。だが、 ジョニー・デップは、今もまだその怨霊から逃れられないでいる。西海岸時間1日(月)、デップの元ビジネスマネージャーがL.A.の裁判所に提出した訴状に、デップのDVに触れる文面があるのだ。

この訴訟自体は、今年1月、デップが17年間雇ってきたビジネスマネジメント会社TMGを詐欺と横領で訴訟したことに始まっている。TMGは、即座にデップを逆訴訟し、その訴状の中で、デップが自分たちプロのアドバイスも聞かずに浪費を続けたと述べた(逆訴訟でわかったジョニー・デップの生活ぶり:ワイン代は月339万円、ボディガード代は月1,700万円年後半、TMGは、担保だったデップの不動産を処理しようとした。デップが訴訟を起こしたのは、それを阻止する目的に過ぎないと、TMGは主張している。

新たに火をつけたのはデップが受けたインタビュー

今回、彼らがあらためて訴状を出したのは、最近デップが「The Wall Street Journal」へのインタビューでこの件について発言したのを受けてのようだ。

全部で38ページの訴状に書かれてあることのほとんどは、1月の逆訴訟の内容の繰り返しだが、早くも3ページ目に、「TMGに対して悪意ある訴訟を起こして以来、初めてのインタビューで、デップは平然と、自分の金は自分の好きなように使う権利があると述べた(そのことには我々も同意する)。彼は、『The Wall Street Journal』に対し、『金は僕のもの。毎日1万5,000個のコットンボール(綿ボール)を買ったとしても、それは僕が決めることだ』とある。さらに、ハンター・S・トンプソンの遺灰を巻くために使ったお金は、我々の言うところである300万ドルではなく500万ドルだったとも豪語した。彼は、恥じるどころか、誇張をしているのである」とある。

また、7ページ目では、デップがこのインタビューで「僕がそこまでひどいクライアントならば、 僕を捨てればよかったじゃないか」と語ったことに触れ、「TMGは、長年のクライアントが最も困った状況にある時にその人を捨てることはしない。我々は彼に500万ドルを融資したほどなのだ」と弁明。15ページ目では、デップが衝動を抑えられないことに触れ、「今になって思えば、彼は衝動買い症候群を患っているのだと思う。この裁判で、専門家から彼の精神状態を分析してもらうことになれば、それは証明されるだろう。彼が『The Wall Street Journal』で無駄遣いを誇らしげに語ったのも、新たな証拠となる」と述べられている。

デップがハードに手を振るったことは使用人から聞いた

ハードの名前は、28ページ目に登場する。本来、離婚問題とは何の関係もないのに彼女の名前を出してきたのは、デップが嘘つきであることを強調したかったからと思われる。

まずは、まだ離婚騒動が起こる前の2015年、ハードがオーストラリアに愛犬2匹を許可なしで持ち込んだことが述べられている。そこでは「デップは、政府関係者や公に対し、すべては誤解のせいと語った。しかしTMGは、デップが、違法であることを承知でやったことを知っている。そして、いざ責められた時、彼は長年の従業員のせいにしたのだ」と書かれている。

DVが出てくるのは、その直後。「アンバー・ハードとの離婚騒動の間、デップは彼女に暴力を振るったことを、繰り返し否定した。 注目を集めるために嘘をついたのだと、彼女を責めてもいる。しかし、彼らの家の使用人の複数から、我々は、デップが時に感情不安定になり、ハードに手を振るったこともあると聞いている。我々はまた、2014年ごろ、彼がハードを激しく蹴った事件についても聞いた」とある。

離婚騒動中、ハードがデップのアシスタントに送ったテキストメッセージがメディアに露出したことがあった([ジョニデ離婚:デップのアシスタント「アンバーが流出したテキストメッセージは嘘」 https://news.yahoo.co.jp/byline/saruwatariyuki/20160603-00058395/])。 そのニュースが出た時、デップのアシスタントは、そのメッセージは大きく改ざんされたもので、自分が書いたものとは違うと公言している。訴状で、TMGはその出来事についても触れ、「デップは、(メディアに露出した)テキストメッセージが本物であると知っていた。そしてアシスタントに嘘をつくように指示したのだ。TMGは、その事実を知っている」と述べている。

真相は裁判で明らかになるか

訴状ではまた、デップがセリフを覚えたくないがために、1年を通して音響エンジニアを雇用し、現場でセリフを毎回教えてもらっているという新たな事実も明かされている。プロの俳優としては激しいイメージダウンだが、それらはもちろん、彼らの言い分だ。彼らの詐欺で大きな損失を受けたとするデップは、TMGに2,500万ドルの損害賠償を求めている。デップが正しかったとの判決が出れば、TMGは、金銭的には当然のこと、会社の存続をも揺るがす大打撃を受ける。彼らとしては、多方面から、「デップが信頼ならぬ人だ」と説得したいところだろう。

今月半ばから、デップは「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」のプロモーションで多忙だ。つい最近も、突然、キャプテン・ジャックの衣装でアナハイムのディズニーランドに登場し、ファンを狂喜させたばかり。今年はほかにも「LAbyrinth」と「Murder of the Orient Express」の公開が控えている上、来年は「ファンタスティック・ビースト」の続編がある。そんな中で、彼はまたもや醜い訴訟沙汰に巻き込まれたわけだ。TMGは、陪審員による裁判を要求している。そのとおりになれば、公の裁判に引っ張り込まれることになる。波乱万丈の1年を終えたばかりのデップは、今年後半をどう過ごすことになるのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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