Yahoo!ニュース

コレ、普通二輪免許で乗れます! ハスクバーナ「ヴィットピレン401」は都会のスプリンターだった。

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
Husqvarna VITPILEN 401 画像出典元:MotorFan

簡素で進歩的というアンチテーゼ

画像

ヴィットピレンとはスウェーデン語で「白い矢」という意味。先日、試乗したスクランブラーテイストのスヴァルトピレン(黒い矢)とはエンジンと車体を共有する兄弟車である。カラーリングも対照的で、まるで白鳥と黒鳥のような雰囲気だ。

これら新しいスウェディッシュスタイルは「SIMPLE. PROGRESSIVE.」をコンセプトに掲げている。簡素かつ進歩的であるということ。懐かしさと未来感が調和したシンプルで美しいデザインの中に、現代的な水冷単気筒エンジンと足まわりが詰め込まれている。余分なものを削ぎ落したミニマリズムの美学と言ってもいいだろう。過剰なほどの排気量やパワーを電子制御でなんとか操っている、現代のモーターサイクルへのアンチテーゼでもあるのだ。

ハートと運動神経はKTM譲り

画像

さて、ヴィットピレン401についてもう少し詳しく見ていこう。最高出力44psを発揮するパワフルな水冷単気筒DOHC4バルブ373ccをスチールトレリスフレームに吊り下げるように搭載する基本構造はスヴァルトピレン401と同様で、さらに言うとKTM390DUKEのプラットフォームを共有化している。前後サスペンションにWP製の倒立フォークとモノショックを装備し、ブレンボのOEブランドであるByBre製ブレーキとボッシュ製ABSユニットを採用するなど最新コンポーネントを装備している点も共通だ。このことからも走りの性能に手抜きはないことが分かる。

ライポジとタイヤに性格が表れる

画像

気になるのはスヴァルトピレン401との具体的な違いだろう。異なるのはまずハンドルで、スヴァルトピレンのバーハンに対しヴィットピレンはセパハンで低めの位置に設定。また、タイヤもスヴァルトピレンが林道走行などにも適したセミブロックタイヤを履いているのに対し、ヴィットピレンは完全なオンロード用スポーツタイヤを採用。細かいところではフロントフォークのスプリング設定が異なり、スヴァルトピレンが初期は柔らかく奥で踏ん張るプログレッシブレートであるのに対し、ヴィットピレンはシングルレートを採用するなど、よりオンロードでのスポーツ性能を重視。また、シートもスヴァルトピレンの前後分割タイプに対しヴィットピレンは前後一体タイプとなっている。

充実の中速トルクで弾ける加速

画像

見た目はとてもスリムかつコンパクトで、国産250ccスポーツぐらいのサイズ感だ。跨ってみると、シートはやや高めで逆にハンドル位置は低いため前傾は強めに感じる。外観はネイキッドだが、ライポジはフルカウルのスーパースポーツに近い。

エンジンは390DUKE譲りで鼓動感があってトルクフル。低速から粘りがあるしハンドル切れ角も十分あるためUターンも得意だ。最も美味しいのが4000~7000rpm辺りの中速トルクを活かした加速で、軽量な車体とのマッチングも良く、弾けるように加速していく。さらに現代的なショートストロークとツインカムの組み合わせにより高回転域での伸びもいい。というように、単気筒ではあるが味わい重視ではなく、しっかり走りの性能を重視している。

一方でデザインは個性的で、違う次元の世界からやってきたようなアバンギャルドな雰囲気を醸し出している。タンクサイドやラジエターガードにさりげなく施された楕円デザインやフラッシュイエローが印象的だ。丸型ヘッドライトもLEDタイプで、丸型メーターもデジタル表示が重なって浮き出るギミックが施されていたり、と細かい部分にも洗練された大人のセンスを感じる。

重量級にはない俊敏なフットワーク

画像

メインステージは都会に網の目のように広がるアスファルト。信号のタイミングさえ合えば、右折の矢印信号に滑り込んでクイックにUターンし、返すエッジで次の交差点を小さく90度に切り取るような走りもできてしまう。大排気量マシンにはとても真似できない軽やかなフットワークがヴィットピレン401の真骨頂だ。

スヴァルトピレンと比べてもフロントフォークのしっかり感やタイヤの剛性感は高く、加えて前傾ポジションによるフロント荷重の効果などにより、さらに俊敏なハンドリングに仕上げられている印象だ。その意味で、気軽さや楽なライポジを求めるならスヴァルトのほうがおすすめかもしれない。

一点気になったのはハンドルグリップに伝わる振動。ハンドルバーがトップブリッジに直接マウントされているためと思うが、長く乗っているとやや手首に疲れが出た。

ともあれ、軽さを生かした機動力と弾ける加速感は爽快そのもの。ストリートをすばしっこく動きまわる、まさに都会のスプリンターだ。

φ320mmシングルディスクとBybre製ピンスライド式4ポッドキャリパーの組み合わせ。ステンメッシュホース採用でカチッとしたタッチだ。
φ320mmシングルディスクとBybre製ピンスライド式4ポッドキャリパーの組み合わせ。ステンメッシュホース採用でカチッとしたタッチだ。
エンジンはKTM390DUKE用として定評のある水冷単気筒DOHC4バルブ375ccユニットでゴールドのカバーはハスクバーナ伝統のロゴが刻まれる。
エンジンはKTM390DUKE用として定評のある水冷単気筒DOHC4バルブ375ccユニットでゴールドのカバーはハスクバーナ伝統のロゴが刻まれる。
サイレンサーはシンプルかつ軽量なアルミ製。リヤブレーキはφ230mmディスクと1ポットキャリパーに加え、ボッシュ製 9M+2チャンネルABSを標準装備。
サイレンサーはシンプルかつ軽量なアルミ製。リヤブレーキはφ230mmディスクと1ポットキャリパーに加え、ボッシュ製 9M+2チャンネルABSを標準装備。
燃料タンク容量は9.5Lと小ぶりながら低燃費のメリットを活かし長距離でも十分な航続距離を実現。タンクサイドの張り出しはプロテクターの役割もある。
燃料タンク容量は9.5Lと小ぶりながら低燃費のメリットを活かし長距離でも十分な航続距離を実現。タンクサイドの張り出しはプロテクターの役割もある。
シートはワンピースタイプとなっていてクッション性も良く、本革のようなヌメッとした独特の質感が気持ちいい。
シートはワンピースタイプとなっていてクッション性も良く、本革のようなヌメッとした独特の質感が気持ちいい。
シート高は835mmと高めでハンドルは低いため相対的に前傾スタイルになる。車体はスリムだが足着きはまずまず。ライダーの身長は179cm。
シート高は835mmと高めでハンドルは低いため相対的に前傾スタイルになる。車体はスリムだが足着きはまずまず。ライダーの身長は179cm。

REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

出典:MotorFan

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

佐川健太郎の最近の記事