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「当然?」「非礼?」 G20「日韓首脳会談拒否」への韓国側の反応は?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
G20での文在寅大統領との首脳会談をスルーした安倍首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 注目されたG20サミットでの日韓首脳会談は実現しなかった。

 安倍晋三首相と文在寅大統領のツーショットは公式歓迎式会場入口と晩さん会が行われた迎賓館前で2度握手し、一言挨拶を交わして終わった。長くて8秒だった。

 首脳会談が実現しなったのは日本側の事情である。表向きは「日程上の都合」、即ち多忙を理由に挙げているが、G20までに元徴用工の問題で満足いくような解決策を示さなかったことへの「報復措置」あるいは抗議の意思表示と言えなくもない。

 今回の日本の「異例の対応」について韓国では「礼遇」「非礼」と受け止められているようだが、韓国の政界、メディア、国民の反応はこれまでのように「反日」一辺倒でなく、様々だ。

 韓国政府は「今回は、日本が準備できなかったため会うことができなかったが、我々はいつでも対話をする用意がある」と、日本の対応に失望しながらも、批判することもなく、沈着冷静に対応していた。政権与党の「共に民主党」も同様で、反発することもなく、無言を貫いている。

 一方、野党第1党の「自由韓国党」は「(首脳会談が流れたことは)日本政府にも責任はあるが、文在寅政権の無責任外交、無法外交、慢心外交により我が国民の自尊心は地に落ちた」と手厳しい。中でも党No.2の羅ギョンウォン院内総務は「韓日関係は単純な感傷的次元を超え、国益次元から扱うべきなのに文政権は政治報復という酷な政治的利害関係に縛られ、関係破綻も辞さない無責任な外交をしている」と辛辣だ。

 羅総務は「韓日関係悪化は安保、経済に深刻な影響を及ぼしかねない」との憂慮を表明した上で「文政権は今からでも政権の利害関係に焦点を合わせた外交ではなく、国益と安保、経済のための外交をやるべきだ」と文政権に釘を刺すのも忘れなかった。

 第2野党の「明るい未来党」も「自由韓国党」と基本的スタンスは同じで、孫鶴圭代表は「韓国だけが国際関係で疎外されているのではないかとの疑念が生まれている。外交は理念ではなく、国益の次元から接近すべきなのに青瓦台は韓日首脳会談霧散の責任を日本になすりつけており、外交の長である康京和長官に至っては国会で『日本の報復的措置があれば、黙ってはいない』と感情的な発言まで行っている」と批判したうえで「文政権が理念と感情に嵌り、朝鮮半島の平和という最優先の国益を損なうのではないかと憂慮している。対日外交では理念や感情ではなく、国益を優先する態度を持つようにすべきだ」と注文を付けていた。

 ネット上での国民の反応では文大統領の対応のまずさを指摘する書き込みが多く、幾つか例を挙げると;

 ▲「日本を見くびっている国は韓国しかいないのでは。国益のためには自尊心ごときは捨てよ。韓国が困難な状況にあるのは3歳の子にもわかることだ。日本を憎むため歴史を学んだわけではない」

 ▲「自国を訪れた国家元首を門前払いするのはよほどのこと。日帝侵奪36年も重要だが、いつまで感性的な政治をやるのか?国内用では有効かもしれないが、国益や外交にとっては無益だ。過去史も慰安婦問題も重要かもしれないが、中身のある外交をやるのが外交部の仕事ではないのか」

 ▲「私が安倍であっても、文在寅とは会談しない。露骨に感情を露わにし、敵視しているのに誰も会談する気にはなれないだろう」

 その一方で、日本を批判する声も少なくはなく、幾つか挙げると;

 「日本が会いたくないならば、会う必要はない。後から会いたいと言ってきても無視しよう」

 「北朝鮮には平和がどうのこうのと慌てふためいているのに。日本という国は」

 「安倍首相は支持率が下がるとすぐに韓国を利用する」

 中には記者会見まで開いて「主催国である日本の安倍晋三首相が東アジア平和のために共に動いている隣国・韓国の文大統領との首脳会談を避けようとしている姿勢に韓国国民は深い失望感を感じている」と公然と批判した「東アジア平和会議」のような市民団体もあった。

 なお、韓国メディアの反応は政府寄りの「ハンギョレ新聞」のように「韓日首脳はG20の度にほぼ欠かさず2者会談をしてきた慣例がある。このような前例を根本から無視するということは、外交的礼儀にも外れるものだ」と日本の対応を批判する論調もあったが、「出口見えぬ最悪の韓日関係」(韓国日報)の見出しに示されているように総じて日韓関係の現状を憂い、その上で「霧散した韓日首脳会談 速やかに実現させよう」(中央日報)との論調が主であった。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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