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北朝鮮がグアム沖に向けミサイルを発射する確率が90%の訳

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
4月の軍事パレードに登場した「火星12号」

 北朝鮮がミサイルの発射、あるいは核実験に踏み切る場合は、外務省声明などを通じて必そのことを示唆し、予告とおり実施してきた。

 古くは、日本列島を飛び越えた2009年4月5日の「衛星」と称する「テポドン」は41日前の2月24日に所管の朝鮮宇宙空間技術委員会が「人工衛星打ち上げの準備を行っている」と予告していた。

 また、直近の7月4日の「火星14号」と称するICBM発射も「労働新聞」(5月31日付で「ICBMの試験発射の準備ができている」と示唆されていた。

 さらに、北朝鮮は昨年3月から弾道ミサイルを乱射して、昨年1年だけで25発、今年もすでに11発発射しているが、これもまた昨年2月23日の「朝鮮半島有事の際の第一次攻撃対象は韓国の青瓦台(大統領府)と韓国内の基地及び施設、第二次攻撃対象は太平洋上の米軍基地と米本土」との最高司令部の重大声明で暗示されていた。

 北朝鮮はこの重大声明に従い、韓国全土を標的にした500kmの弾道ミサイル「スカッドC」、在日米軍基地とグアムのアンダーセン基地を標的とする「ノドン」「スカッドER」「ムスダン」「北極星1型」(潜水艦弾道ミサイル)、その改良型の「北極星2」、準ICBMの「火星12号」そして、ハワイや米本土を標的にしたICBM「火星14号」を発射し、いずれも成功させてきた。

 ミサイルだけでないは、核実験も「有言実行」であった。

 一度目(2006年10月9日)は「米国の極端な敵対行為により最悪の情勢が到来している状況下であらゆる手段と方法をこうじて自衛的戦争抑止力を一層強化する」との声明(7月16日)があり、直前(6日)には核実験計画が発表されていた。

 二度目(2009年5月25日)の時は4月14日に「敵対勢力の加重する軍事的脅威に対処し、任意の自衛的核抑止力を強化する」との声明が出されていた。

 三度目(2013年2月12日)も「自衛的軍事力を質量ともに強化するため物理的対応措置を取る」との外務省声明(1月24日)と「高い水準の核実験」を示唆する国防委員会の声明(1月25日)が出されていた。

 四度目(2016年1月6日)も「米国が武力、軍需、貿易機関、外交官を制裁対象の名簿に加え、軍需部門だけでなく、民需部門を含め我々の経済全般を窒息させようとしている。米国が敵対視政策にこだわるなら米国が望むものとは正反対の想像できない結果を招くだろう」との外務省代弁人声明が前年(2015年)の12月16日に出されていた。

 そして5度目(2016年9月9日)も直前の9月1日に外務省スポークスマンが「米国が旧態依然の制裁のラッパを吹き続けるなら、その後遺症は悲惨なものになる」との談話を出してから強行している。

 もう一つの根拠は、国連安保理の制裁決議が採択されれば、必ずと言っていいほど反発して対抗措置としてミサイルの発射や核実験を行ってきたことだ。

 一番、身近な例としては、6月2日に7度目の安保理決議「2356号」が採択される際、「今後もミサイル発射を多発的に連続的にやる」(外務省代弁人声明)と予告し、およそ1か月後の7月4日、トランプ政権が内々にレッドラインに定めていたICBMを発射している。

 北朝鮮は8日に戦略軍報道官声明で「火星12」によるグアム周辺への包囲射撃計画を発表したが、北朝鮮はすでに先月(7月)14日に「国連安保理が再び制裁決議をすれば、後続措置を取る」との談話を出していた。また、同月31日にも外務省スポークスマンが「米国が軍事的冒険と超強度の制裁策動にしがみつくならば我々はすでに明らかにしたように断固とした正義の行動で応える」と言明していた。

 国連安保理は8月6日に国連決議を無視して二度にわたって強行した北朝鮮のICBM発射への懲罰として全会一致で新たな制裁決議「2371号」採択しているが、北朝鮮はすでに「全面排撃する」との政府声明(8月8日)を出している。

 声明では「断固たる正義の行動へと移る」と「次の手」を示唆したが、北朝鮮が示唆した「後続措置」や「正義の行動」がまさに「火星12」によるグアム周辺への包囲射撃計画ということになる。

 金正恩委員長がロケット戦略軍に対して「米帝(米国)の侵略装備を制圧、牽制するための強力かつ効果的な行動案を検討せよ」と指示していたなら、やはり、発射準備が整えば、ICBM同様に任意の時刻に発射命令が下される可能性は大である。

 米国が21日からの米韓合同軍事演習を中止すれば、あるいは戦略爆撃機B-1Bの朝鮮半島上空でのデモンストレーショを止めれば、北朝鮮は計画を中止するとしているが、トランプ政権が北朝鮮の脅しに屈して取り止める可能性は極めて低いだけに結局は見切り発射となるだろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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