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フリーランスや経営者の妊娠・出産にまつわるセーフティーネットはいらないという意見に対して回答したい

小酒部さやか株式会社 natural rights 代表取締役
雇用関係によらない働き方と子育て研究会提供/育児しながら働くフリーランスイメージ

2月22日、筆者である私が発起人を務める「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」が「フリーランスや経営者で働きながら妊娠・出産・育児をした経験のある女性」を対象に行ったアンケート調査結果を発表し、それを踏まえた政府への要望を厚労省にて記者会見した。

参考:

経営者やフリーランスで働く女性の44.8%が産後1ヶ月以内に仕事を開始。日本初の実態調査が発表された

また、同じ2月に『保育園落ちて嬉しい「不承諾通知」歓迎の問題からお妊婦様問題、マタハラ問題を1つの問題として議論しよう』という記事を出し、この2点を受けてBUSINESS INSIDER JAPANさんが私を取材してくれて、今週「1歳までに300万!フリーと会社員にこれだけの出産格差--増加するお妊婦さま」という記事が掲載された。

この記事に対し、多数のコメントが付いているので、主なものに回答したいと思う。

【コメント】

一つ、記事が誤っている。

フリーランスが支払っているのは国民健康保険と国民年金である。

仮にフリーランスが社会保険に加入しているならば免除になるはずだし出産手当金も受け取れるはずだ。

フリーランスの健康保険と年金が免除にならないのは、出産手当金や健康保険料免除が社会保険の制度であり、その社会保険に加入していないからだ。

【回答】

ご指摘、ありがとうございます。

私もフリーランスが支払っているのは国民健康保険と国民年金という認識です。上記2点が社会保険でないから、産休期間中に免除にはならないし、出産手当金も出ないというご意見ですね。

実は、2019年4月より、国民年金第一号被保険者も、産前産後期間(出産予定日の前月から4ヶ月間)は国民年金が免除されます。現時点では、国民健康保険料、介護保険料は依然として納付の必要があるので、同じようにこの期間免除にして欲しいという要望をしております。

また、国民健康保険から出産手当金を出すかは、任意とされています。任意なので、同じ国民健康保険でも、東京美容国保組合、東京土建国保組合、全国土木建築国保組合などは出産手当金があり、現在、出産手当金があるものとないものとが混在している状況なので、一定の収入を得て保険料を納めている女性には、一律に出産手当金を出して欲しいと要望しております。

以上にように、社会保険でないとしても、免除も出産手当金も無理な話ではないと思っております。

【コメント】

会社員よりフリーランスの良いところも沢山あるのに、こんな時だけ声をあげるなんて都合良すぎませんか?

【コメント】

フリーランスの意味分かってないのかな?

てか、フリーでやっているのに、なんで準備してなかったの?

【コメント】

社会は会社員にやさしくフリーランスに厳しいといいたいようですが、育児休暇に関してはそのような違いがある事をわかって、職業選択しているのではないですか?

税金の控除に関しては、フリーランスは自由がきくメリットがある。会社員は決められた時間を守り働かなければならないデメリットがある。メリットとデメリットはどんなことにもあります。

保育園が足りないというのは行政がなんとかするべきことですが、仕組みを理解して職業を選んでいないのは本人の責任。選択は自由ですから。

【コメント】

フリーランスだから恩恵がないのは当たり前。嫌なら会社員になればいい。文句言っても仕方ない。

【回答】

会社員とフリーランス、それぞれにメリットとデメリットがあるというご意見は、ごもっともです。フリーランスは場所や時間を選択しやすく、ワークライフバランスを実現しやすいというメリットもありますので、雇用保険から成り立つ育児休業まで求めるつもりはありません。そのような制度がないという覚悟の上で、フリーランスや経営者になっているのですから。

けれど、母体保護の期間さえセーフティーネットがない、認可保育園の入園が会社員と同等の働き方でも不利になることが、子どもを産みづらくしている要因なのであれば、この少子化のご時世で改善しないのは、時代に合わないのではないかと私は思います。

海外ではすでにフリーランスのセーフティーネットを整備している国も多数あります。実際に政府も 「働き方改革実行計画」のメニューに「柔軟な働き方がしやすい環境整備」を掲げており、上記の国民年金の免除など改善する方向に向かっています。

フリーランスで働く人は増えていて、現在日本全体で約1100万人。今後、企業の外部発注は増え、益々フリーランスが増えると予想されます。「フリーランスの活用」「働き方の多様化」と政府が謳うのであれば、こうしたセーフティーネットの整備をすることなく推し進めるのは、劣悪な就労をするフリーランスを増やすこととなってしまいます。

自己責任」という方は、ご自分の奥さんや娘さんがフリーランスや経営者で妊娠した時も、「それは自己責任だ!」と言えるかどうか、一度想像してみてもらいたいです。

ご説明しましたとおり、産休相当期間の社会保険の免除や手当金、認可保育園入園にあたり平等に扱って欲しいという要望は、それほど無理な話ではないと思っております。自己責任論ではなく、辛い立場の方を少しでもより良くする寛容さがあってもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【コメント】

こんな記事を載せて何の意味があるんだろうか。結局、適齢期の女性が子どもを産んだら負けと思わせているだけじゃないのか。

保護が手厚い正社員については「お妊婦様」などとあげつらい、フリーランスは過酷な経済格差を突きつけて一体誰が得をするのか。

【回答】

私事で大変恐縮ですが、私は「マタハラ」という言葉を広め、マタハラ防止を牽引する活動をし、昨年1月より企業にマタハラ防止が義務付けられました。次に、非正規も育児休業が取りやすくなるよう、育休取得の要件緩和を求める活動をし、実現しました。(介護休取得の要件も同時に緩和されました。)そして、今回フリーランスや経営者の改善を求めて活動しています。

「女性が子どもを産んだら負け」とならないよう、どの選択肢を選んでも妊娠・出産・子育てしながら働き続けられるようにと願っております。

株式会社 natural rights 代表取締役

2014年7月自身の経験から被害者支援団体であるNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より「マタハラ問題」、11月花伝社より「ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~」を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rightsとなるよう講演や企業研修、執筆など活動を行っている。

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