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江越と高山のアベック弾に「嬉しくなっちゃったよ!」と平田監督《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ともに同点弾を放った高山選手(左)と江越選手(中)、決勝打は長坂選手(右)です。

 22日に宮崎へ入って、すぐさま選手全員と個別面談をした平田監督。翌23日には早速、フェニックス・リーグで指揮を執りました。監督としては2019年のシーズンからなので、正式には“5年ぶり”となるんですかね?でもフェニックス・リーグでの采配は2014年10月以来だから4年ぶり?球場でもいろんな方々と挨拶を交わし、大忙しでしたね。

 この日は韓国プロ野球チーム・斗山ベアーズとの対戦。試合は先制されて熊谷選手のタイムリー内野安打で追いつき、勝ち越されて高山選手のソロで追いつき、また勝ち越されて江越選手のソロでまた追いついて、9回に長坂選手のタイムリーで勝ち越して逃げきり。リリーフ陣の好投も勝因です。

 なお監督だけでなく、コーチ陣も大幅に入れ替わったこともあり、三塁コーチは中村守備走塁コーチが務めたのですが、一塁は山田バッテリーコーチでした。そういえば筒井コーチと藤本コーチが2人とも1軍に行ったので、守備走塁は中村コーチだけなんですね。

 ホームランを打った高山選手は、今までなら筒井コーチが早々にホームで出迎えてくれたので、ハイタッチをしようとしたら誰もいなくて「あれ?」という感じに見えたのは…気のせい?ちなみに山田コーチは一塁コーチの位置から少しホーム寄りに移動したものの、遠目では拍手を送る感じでした。

《フェニックス・リーグ》 10月23日

斗山- 阪神 (生目第二)

 阪神 001 100 011 = 4

 斗山 101 001 000 = 3

 

◆バッテリー

【阪神】馬場-歳内-守屋 / 長坂

【斗山】リンドブラム(3回)-パク・チグク(1回1/3)-ジョン・ウォンジュン(1回2/3)-キム・スンフェ(1回)-イ・ヒョンスン(1回)-キム・カンリョル(2/3回)-パク・シンジ(1/3回) / ヤン・ウィジ-パク・セヒョク(6回~)

◆本塁打 神:高山、江越

◆二塁打 神:江越 斗:キム・ジェホ、キム・ジェハン2

◆盗塁 神:熊谷2、江越、荒木、坂本

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]二:熊谷  (4-1-1 / 0-0 / 1 / 0)

2]遊:植田  (4-2-0 / 2-0 / 1 / 1)

3]中:江越  (4-2-1 / 1-0 / 0 / 0)

4]左:板山  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 1)

5]右:高山  (4-1-1 / 3-0 / 0 / 0)

6]一:荒木  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃一:森越  (2-1-0 / 1-0 / 1 / 0)

7]指:坂本  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃打指:小豆 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

8]捕:長坂  (3-1-1 / 1-1 / 1 / 0)

9]三:藤谷  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

 ※小豆=小豆畑

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

馬場 6回 94球 (10-8-0 /3-2) 148

歳内 2回 27球 ( 0-2-0 / 0-0) 147

守屋 1回 18球 ( 0-2-0 / 0-0) 149

《試合経過》  ※敬称略

一塁の山田バッテリーコーチ。
一塁の山田バッテリーコーチ。
三塁は中村守備走塁コーチ。
三塁は中村守備走塁コーチ。

 先取点は斗山でした。馬場は1回、先頭に右前打、次いで左翼線二塁打でいきなり無死二、三塁として3番キャッチャーのヤン・ウィジンに左前タイムリー。2回も先頭のヒットをはじめ3安打を浴びて1死満塁のピンチを招きますが、ここは1回に打たれた1番と2番を連続三振に仕留めて無失点。

熊谷選手は3回にタイムリー内野安打と二盗。植田選手のヒットで三塁へ行った時に中村コーチと。
熊谷選手は3回にタイムリー内野安打と二盗。植田選手のヒットで三塁へ行った時に中村コーチと。

 こちらの打線は1回、2死から江越が左越え二塁打を放つも得点なし。2回は三者凡退。しかし3回、先頭の長坂が四球を選び、1死後に二盗成功(捕手の送球エラーで三塁へ)、熊谷の内野安打で同点のホームを踏みました!熊谷が盗塁を決め、植田の左前打と盗塁で1死二、三塁となりますが、連続三振で1点止まり。斗山の先発・リンドブラムの前に3回までで6三振です。

先発の馬場投手。6回で10安打を浴びましたが、8三振で無四球です。
先発の馬場投手。6回で10安打を浴びましたが、8三振で無四球です。

 追いついた直後の3回裏、馬場は1死から4番のキム・ジェハンに右中間への二塁打と板山の捕球エラーで三塁へ進め、続くオ・ジェイルの右前タイムリーで勝ち越しを許します。すると4回、斗山2人目のパク・チグク(サイドスロー)から先頭の高山がレフトへホームラン!また追いつきました。

2打席続けて見逃し三振を喫してしまった板山選手。
2打席続けて見逃し三振を喫してしまった板山選手。

 4回と5回は三者凡退に切って取った馬場。打線もその間、植田の内野安打のみで2対2のまま迎えた6回裏、馬場は先頭のキム・ウィジンにまたしても二塁打を浴び、オ・ジェイルの右前タイムリーで勝ち越し点…。3回と同じく4番と5番にやられましたね。そのあとは三振と遊ゴロ併殺、1点にとどめています。

歳内投手は2イニングを投げ無安打無失点。平田監督も絶賛でした!
歳内投手は2イニングを投げ無安打無失点。平田監督も絶賛でした!
守屋投手は9回1イニングを2奪三振で三者凡退締め!
守屋投手は9回1イニングを2奪三振で三者凡退締め!

 7回の攻撃は三者凡退。その裏を歳内が味方エラーの走者のみで抑えると、8回2死で江越がレフトへ同点ホームラン!フルカウントからの6球目を見事にとらえ、おそらく本人も会心のスイングだったのでしょう。バットを投げ捨てた左腕がきれいに伸び、思わず見とれてシャッターを切れなかったことが悔やまれる一打でした。

 続投の歳内が、その裏を2奪三振などで三者凡退に抑える好投!そして3対3のまま迎えた9回、1死から途中出場の森越が2打席目で中前打を放って盗塁成功。2死後に長坂が初球を左前打、三塁の中村コーチが腕を回して森越が一気にホームイン!土壇場で勝ち越すと、その裏を守屋が連続三振と投飛の三者凡退で片づけて試合終了。

試合後、勝利のハイタッチがなく、選手たちはエアタッチで引き揚げていきました。
試合後、勝利のハイタッチがなく、選手たちはエアタッチで引き揚げていきました。

 バッテリーと内野陣、そして外野陣が集まり、そのあと1人ずつベンチへ向かってハイタッチ…と思ったら、既にベンチを出て迎えようと並んでいた選手もいたのですが、引っ込みました。どうやら監督が動かなかったみたいですね。戻ってきた選手たちは苦笑いで“エアタッチ”です。

 21日の巨人戦に続く毎回の14三振(熊谷を除く全員)を喫した阪神打線ですが、この日は投手陣も3人で12三振(7回を除く毎回)を奪ったので、両チーム合わせて26三振という試合になっています。ヒットは阪神が8、斗山は10。ちなみに四死球が斗山の先発が与えた1四球のみ、つまり阪神投手陣は3試合連続で“無四球”でした。

「江越のHRは余韻に浸っちゃったよ」

 試合後は平田監督の「何かあるか?」という、これまた前回や前々回の監督時代と同じ呼びかけで囲み取材が始まりました。途中で掃除の始まったベンチから移動したり、挨拶に来られる方があったりで、何度か中断。そのたびに炸裂する“平田節”に爆笑です。たとえば…「彼は明治の後輩やねん。先輩に見えるけど(笑)」とか。

試合前のメンバー表交換。
試合前のメンバー表交換。

 その中断は省いてご紹介しましょう。まず初采配での勝利に「勝ち負けは関係ないにしても、やっぱり気分はいいもんだよ。いいところ出そうという気持ちが伝わる」という感想。「矢野監督のことしのスローガンを当然続けて、アウトになっていろいろ覚える、この時期はそういうことなんで」

 最後は長坂選手が初球を打ったり、4選手が盗塁を決めたりしました。早いカウントからいく姿勢について「それは準備ができていないと打っていけないんでね。きのうも言ったように積極的っていうところで準備して。初球から振れるってのは、タイミングをしっかり取っておかないといけないってことだからね。そういう意味でよかったんじゃない?」と平田監督。

 高山選手と江越選手がアベックホームランですね。「見事だねえ。久しぶりに見るよ、2発なんて。久しぶりだろ?いつ以来だよ。なんか久しぶりだなあって。江越のホームランなんかもう、余韻に浸っちゃったよ(笑)。すごいわ、あんな。2発なんて。久しぶりだな。嬉しくなっちゃったよ」

 「甘い球を何とか仕留めるというところでね。江越は三振もしたけど、そういうところで少しずつ自信を持ってほしいよな。つかんでほしい。最初のレフト前でセカンドへいった走塁なんて見事だよ。それは矢野監督もことしファームでやっていて、重々わかっているだろうけど」

奪三振やホームランを狙うことも

練習を見守る平田監督。あちこちに目を配っています。
練習を見守る平田監督。あちこちに目を配っています。

 続いて投手陣の話。馬場投手には「まだまだもっとよくなるよ。きのうも言ったように伸びしろを感じるよ。真っすぐの力強さがもうちょっと出てくれば。三振も8個、取っているでしょ?この11月のキャンプと、ひと冬越せばもっとよくなるなって感じがするよね」と期待を寄せています。

 そして「歳内がよかったねえ!」と平田監督の方から話がありました。「2イニング投げるというから、意識的に1イニングは真っすぐしか投げさせなかった。途中から全部真っすぐでいけって。歳内がかなり戻ってきた。よかったねえ。守屋もあれぐらいは投げられるよ。狙って三振を取れっていう時には三振を狙わせるような、そういう課題も与えながらやるけど」

 また「最後、長坂もホームラン打てって言ったんだよ。レフト前しか打たないで。マイナスだよ、ホームラン打てって言ってるのに」と、これまた平田監督らしい“褒め言葉”ですね。

何とかしたいと選手が思わせてくれる

4回にソロホームランを放った高山選手。
4回にソロホームランを放った高山選手。

 話している間、手にしていたボールがウイニングボールかと聞いたところ「いやいや、何にも。腰が悪いからこれで」と否定されました。ウイニングボールはもらっていないようで、終了時のハイタッチもなし。公式戦になればまた行われるでしょうね。なお、腰に当てるためのボールとは別に、もう1つボールを取りだした平田監督。

 「こっちは高山のホームランボール。どうぞって。サインしてくれって。韓国のボールと違うからね。やっぱり韓国のボールはデカいのかな~と思って。ちゃんとフェニックス・リーグって(ロゴが)入ってるんだね。俺、腰が悪いから部屋へ帰ってベッドでぐりぐりって、ちょうどいいねん」

 本当に腰用なのかどうかはわかりませんが、最後に「みんなの意気込みを感じた試合だよ。きょう天気もよくてよかったよ。あと6試合、選手のモチベーションを持続させながら、何かのきっかけをちょっとでもつかませないと。そういう気に我々がさせられる。選手からね」と締めくくっています。

コメントは馬場投手、高山選手、江越選手、長坂選手

先頭打者への対応が今後の課題と話す馬場投手。
先頭打者への対応が今後の課題と話す馬場投手。

 選手のコメントは馬場投手から。10安打3失点という内容に「失点の原因は全部、先頭を出したことだとコーチの方と話をしました。それで1点入ってしまうという、ありがちな…。ノーアウトで(走者を)出すと、球数が増えたりして自分が苦しくなる。これから意識するだけでも変わってくると思うので、先頭にこだわって次も頑張っていきたいです」と話していました。

 高山選手は4回のホームランについて「ひと振りで、しっかり打てたのでよかったです」という、ひとこと。

8回2死からソロホームラン!江越選手。
8回2死からソロホームラン!江越選手。

 1回に二塁打、8回に同点ソロを放った江越選手は「内容がよかったので、続けていきたいです」とのこと。平田監督が見事だったと言っていましたよ。「変化球はしっかり見られたし、インコースのボールにしっかり反応できたので。自分でもビックリしました!」。え、自分でもビックリ?思わず顔を見てしまったら、ちょっと笑顔です。

 さらに、1回の二塁打にした走塁もよかったと。「最初からいこうと思って無理ならやめるというのが、ことしチームで徹底してきた走塁だったので、(きょうは)いけると思ったから」。“甘い球を一発で”というテーマを実践した2安打に「ボール球を振らないと考えるのではなく、甘い球をとらえることだと平田監督から言われて、そのテーマでいって感触がよかったので続けていきたいです」と江越選手。

 この日から秋季練習が始まった1軍について「1試合で終わらず続けて結果が残せるように。課題はバッティングだというのは明確なので、そこは続けてアピールしていきたい」と、フェニックス終了後の秋季キャンプで、打ちまくる覚悟です。

9回に勝ち越しタイムリーを放った長坂選手。写真は3回、四球と盗塁などで三塁へ進んだところです。
9回に勝ち越しタイムリーを放った長坂選手。写真は3回、四球と盗塁などで三塁へ進んだところです。

 9回に決勝打を放った長坂選手。「ホームランを打てといったのに、タイムリーだからマイナスだ」という平田監督の言葉、本当ですか?「いえ、ホームランを打つぐらいのスイングをして来いと言われました」。なるほど。それで?「まあまあ、気持ちは。1球で仕留めたのでよかったです」。この試合で唯一、三塁の中村コーチがぐるぐると腕を回した場面。二塁から激走した森越選手もグッジョブでしたが、9回2死からの決勝打に中村コーチは「いいタイムリーでしたねえ、長坂」と。よかったですね「そうですね」

 

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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