盛り上がる「シン・エヴァ」:まだ「エヴァ」を未履修の人にはハードルが高いのか
遂に公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(以下「シン・エヴァ」)」。
異例の平日月曜公開にもかかわらず、初日だけで興行収入は8億円、動員53万人超えとなる好スタートを切りました。
ニュースやSNSでも連日話題にのぼっており、この週末も益々盛り上がることが予想されます。
一方、そうした世間の盛り上がりを肌で感じつつも、『「エヴァ」は未履修だから』と、鑑賞を見送っている方も少なくありません。
「エヴァ」は、その有名なキャラや台詞などもあり、未履修の人でもなんとなく、どういう作品かは知っている人も多いと思います。
とはいえ本作は”完結編”と位置付けられているだけあり、流石にこれまで「エヴァ」のどのシリーズもみたことがない人がいきなり鑑賞する作品とも思われないようです。
本当にそうなのでしょうか。
※以下、物語の核心に触れるネタバレはありませんが、「シン・エヴァ」内での描写への言及があります。気にされる方はご注意ください。
◆「シン・エヴァ」を楽しむには
ではそもそも、「エヴァ」未履修の人が「シン・エヴァ」を楽しむには、これまでのどの作品をチェックしておくとよいのでしょうか。
本作は、テレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」とその後の劇場版2作まで(いわゆる「旧シリーズ」)の物語を、はじめから新たにリビルドした「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ全4作の完結編、4本目にあたる作品です。
この「新劇場版」シリーズは、それ以前の作品をみていることでより深く味わうこともできますが、このシリーズ自体を独立した作品として楽しむこともできます。
そのため「エヴァ」未履修の方ならば、まずは「新劇場版」の3作(「:序」「:破」「:Q」)をチェックしておけば、今回の「シン・エヴァ」の物語にも問題なく追い付くことができるでしょう。
しかし正直、作品未履修の方が“これから映画を3本観てその完結編に臨む”には、まだまだ精神的なハードルは高いと思います。
◆「エヴァ」完結編であると同時に最新鋭のエンタメ作品
それならば、誤解を恐れずに言いますと、思い切って「シン・エヴァ」から鑑賞して、気になった方は後から過去作を見返してみるのも、個人的には有りだと思います。
本作は確かに、「エヴァ」の完結編にあたる作品ですが、それと同時に、庵野秀明総監督率いるクリエイター陣が手掛ける最新鋭のエンタメ作品でもあるからです。
本作のクリエイター陣は前作「新劇場版:Q」以降、「エヴァ」以外にも、「日本アニメ(ーター)見本市」や「シン・ゴジラ」、「龍の歯医者」など、形式や媒体を問わず数々の作品に携わってきました。そこでの蓄積なども加わって、前作からさらにパワーアップした本作では、手描き・CG・実写・特撮の様々な技法が駆使された、大袈裟ではなくこれまでにみたことがない映像が味わえます。
映像だけではありません。感情を揺さぶる音楽や音響、印象に残るセリフや声のお芝居といった作品のあらゆる要素に込められたエンタメ性の純粋な面白さは、これまでどの程度「エヴァ」に触れてきたかに関係なく、観る人の多くを惹きつけます。
そしてその面白さを足掛かりに物語にのめりこんでいくことが出来れば、多少分からない用語や因果関係などがあっても話の本筋は追えますし、未履修の方でも、鑑賞後の満足感を得ることは十分できると思うのです。
◆一番のハードル
「エヴァ」未履修の方の中には、単に過去作を振り返るのが大変というよりも、長年愛されてきた根強い人気の作品であることや、作品考察が盛り上がることでも有名な作品であるために、『簡単に手を出してはいけなさそう』という、“「エヴァ」へのちょっとした畏怖”がハードルになっている人もいるかと思います。
しかし本作は、そうした一見ハードルの高いシリーズの完結編でありながら、同時に純粋なエンタメ作品としても広く間口が開いた、その意味では「エヴァ」未履修の人にも実はハードルが低い作品でもあると、個人的には思うのです。
それでもやっぱり初めての「エヴァ」が完結編であることには抵抗を感じるかもしれませんが、それでこの作品を劇場で体感できるチャンスを逃してしまう方が、今はもったいないと思います。
未履修であったり、あまり知らないから…と、遠巻きに眺めているのでなく、思い切ってここから新たに「エヴァ」に入って、今しか味わえない作品のこの盛り上がりを、今回は共に味わってみるのもいいのではないでしょうか。
※映画をご覧の際は、引き続き感染対策と予防を十分に行ってご鑑賞ください