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【ラグビーW杯】日当1万円でアジア初のベスト8入り「世界秩序揺るがした日本を強豪国ティア1に」と絶賛

木村正人在英国際ジャーナリスト
スコットランドに勝利し、初のベスト8入りを祝う日本代表(写真:ロイター/アフロ)

ティア1って年寄りクラブ?

[ロンドン発]ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会のグループA最終戦で日本はスコットランドと対戦。後半、スコットランドの猛攻をしのぎ切り、28-21の4戦全勝で史上初となる決勝トーナメント進出、ベスト8入りを果たしました。準々決勝で南アフリカと対戦します。

日本にとってスコットランドは1989年に1回勝っただけ。4年前の前回大会1次リーグで南ア相手に大金星をあげながら10-45で敗れて決勝T進出を阻まれた因縁の相手です。1勝10敗と大きく負け越しています。

ラスト10分のポゼション(ボール支配率)はスコットランド62%、地域でもスコットランドが73%と押しまくりましたが、日本は全体を通してパスの正確さ、スピードと激しさで勝り、計550メートルも前進しました。これで2大会を通じてティア1のチームを3つも倒しました。

英国で試合を放送した民放ITVの解説者は21-7で折り返した前半終了時点で「日本のラグビーにとってマジカルタイムだ」「止めるのはほとんど不可能だ」「素晴らしいの一言」と絶賛。ティア2の日本が勝利すると「ティア1って何? 年寄りクラブなの」と疑問を投げかけました。

「日本が1次リーグで19ポイントを挙げることを予想しなかった。しかし、これはまぐれではない」「日本のパスは正確で、スピードと激しさがある。アイルランド戦の後半と今日の試合を観る限り、南アもスコットランドと同じように簡単には日本のボールを奪えないだろう」

「アジアから史上初のベスト8入りだ。日本代表は1日100ドル(約1万840円)で今年だけで240日もキャンプを張った」「主催者の国際競技連盟ワールドラグビーはラグビーの発展のために日本に地位を認めるべきだ。シックス・ネイションズに日本を加えてセブン・ネイションズにするのもいい」

強化が実った日本

ティア1はニュージーランド、南ア、イングランド、ウェールズ、アイルランド、オーストラリア、フランス、アルゼンチン、スコットランド、イタリアの強豪国です。一方、ティア2の日本はサンウルブズとしてスーパーリーグに参加して強化を図ってきました。

英BBC放送のジェイミー・ライアル記者は「日本のラグビーにとって本当に素晴らしい日だ。そしてW杯全体を見渡した場合、議論するのは難しい。スコットランドにとっては非常に暗いものであり、残酷な方法でW杯の戦列から離脱させられた」と締めくくりました。

BBCスコットランドのトム・イングリッシュ首席スポーツ記者はこうツイート。「忘れられない雰囲気の中で行われた驚くべきラグビーのゲーム。日本は勝利に値し、スコットランドも賞賛に値するが帰国しなければならない。抽選が行われた時、日本がこれほど良いとは誰も思わなかった。日本は世界秩序を揺さぶった。スプリングボック(南ア)に気をつけて」

元スコットランド代表のスコット・ヘイスティングズ氏もこうツイート。「日本対スコットランド戦は最も並外れたゲームだった。日本がプレーした雰囲気、正確さ、スピードは驚異的。スコットランドは陶酔的な絶望を考え直すために帰国する」

スコットランドが台風19号で日本戦が中止になった場合、法的措置を検討すると発言していたことから、「台風に対して法的措置と取ると言って自分たちをお馬鹿さんに見せるぐらいなら、どう試合を組み立てるかラグビーに集中した方が良かった」という厳しい論調も見られました。

日本はアマチュアのラグビーチーム

日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は11日、試合日程が開催国・日本に有利で台風でスコットランドとの試合が中止になって1次リーグの最終戦を戦わずして決勝Tに進出することを日本が望んでいるかのような海外メディアの報道に怒りをぶちまけました。

「過去数日間、私が読んだメディアの報道は日本代表がこれまでに成し遂げてきたことと日曜日のスコットランドとの試合の重要性を損ないました」

「私たちは3回の試合をプレーし勝ちました。グループの首位になっています。まぐれではなかったことをみんなに思い出してほしい。多くの人が多大な努力をしました」

「このチームは今年だけで240日間キャンプを行いました。私たちはアマチュアのラグビーチームです。日本でキャンプに参加している時、プレーヤーが受け取る報酬は1日約100ドルの報酬です」「他のチームと比較してみて下さい」

「チーム全員がスコットランドと試合をしたいと望んでいる」「私たちは世界のエリートチームの一員とみなされる権利を獲得しました。月曜日の朝に目を覚まして自分たちがベスト8にふさわしいチームであることを理解していることが大切です」

「私たちとスコットランドの大きな違いは、私たちは国全体によって突き動かされ、支えられているということです。私のチームは素晴らしいことを達成することによって動機付けられています」

世界に認められた日本代表の実力。次の南ア戦も楽しみです。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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