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低脂肪、野菜いっぱいの食事に効果あり!米大規模試験で乳がん死亡リスクの低下が示される

片瀬ケイ在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー
色の濃いカラフルな野菜と果物で、フィトケミカルを摂取!(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

食習慣と乳がん死亡リスクの関連は?

 低脂肪のタンパク質と野菜、果物、穀物を含むバランスの良い食事をとった女性は、米国で一般的な高脂肪の食習慣の女性と比較して、乳がんで死亡するリスクが21%低いことが、大規模試験の結果で明らかになった。近くシカゴで開かれる2019年米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表される。

 これは、食習慣で乳がんによる死亡を低減できるかどうかを調べた初めての大規模ランダム化比較試験。1993年から1998年にかけて、閉経後の50歳から79歳の女性で、乳がん歴のない4万8835人をこの試験に登録した。

 試験参加者の食生活をみると、摂取カロリーの32%以上が脂肪からのカロリーだったという。ちなみに日本人の食事摂取基準(2015年版)では、脂肪からの摂取カロリーの目標を20%以上30%未満としている。

 この比較試験では、参加者のうち6割の人はそれまでと同じ食生活を続け、4割が食事内容を改善した。具体的には毎日摂取する脂肪からのカロリーは総カロリーの25%以下(目標は20%以下)で、野菜や果物、穀物の摂取を増やす食事を8年半継続した。

低脂肪+植物性食品で死亡リスク21%低下

 4万9000人弱の試験参加者のうち、1993年から2013年までに3374人が乳がんの診断を受けた。試験開始から約20年にわたり全参加者の状況を追跡し、データを分析。その結果、低脂肪で野菜、果物、穀物を多く取り入れた食事に変えたグループは、変えなかったグループと比較して、乳がんによる死亡リスクが21%低いことが示されたという。

 また食生活改善をしていた8年半の間、乳がんになる率も、改善グループは通常の食事をしていたグループと比較して8%低く、体重も平均で3%減っていた。研究者によれば、この体重減については、今回の試験の死亡リスクと関連はなかった。しかし、肥満ががんリスクを高めることを示す試験結果は多い。

 「この試験で、食事で乳がんによる死亡リスクを減らすことができると示されました。健康的な食習慣は良いことばかりで、様々なタイプのがんにも良い効果があることを示す研究結果が増えています」と、ASCO会長のMonica M. Bertagnolli医師はコメントしている。

がんと戦う植物性食品

 米国人と比べれば、日本人は一般的に、野菜や果物、低脂肪タンパク質の魚や豆腐といった健康的な食品を摂取する機会が多いと思う。それでも穀物といえば白米やパン、うどんになりがちだし、ナッツを食べることは少ないかも知れない。

 MDアンダーソンがんセンターの栄養管理の専門家によれば、「がんと戦う」フィトケミカルと呼ばれる化合物を含む野菜、全粒穀物、ナッツ、果物、植物性タンパク質を摂取することが、がんや慢性病の予防に役立つという。すでに4000種類以上のフィトケミカルが発見されているそうだが、それらをすべて含む食品はないので、色々なものを組み合わせて食べる必要がある。

 野菜といってもレタスばかりのサラダではなく、色の濃いカラフルな野菜を取り入れた様々な野菜料理がよさそうだ。そのほか玄米や雑穀米、うずら豆やひよこ豆などの豆類、クルミやアーモンドなどのナッツも、意識して食生活に取り入れたい。

がんのリスクを低減する食品36選

 MDアンダーソンがんセンターが、「がんのリスクを低減するための食品36選」と題した食生活改善のヒントを紹介している。ぜひ参考にして、メニューの幅を広げてみてはどうだろうか。

 米国には「子供の頃から食べていたから、どうしても」といって、朝から甘いドーナツを頬張る人や、「野菜?ポテトチップスを食べているよ」と真顔で言う人が少なくない。子供の頃になじんだ食品は、大人になっても手にとりやすいので、ぜひ子供の頃から様々な野菜や果物、ナッツ、植物性タンパク質を食べてほしいと思う。

 一方で、ホットドックやベーコンなど加工肉や赤身肉は控えて、意識して脂肪分の低い鶏肉や魚、植物性タンパク質に切り替えることも必要だ。農林水産省によれば、最近は、日本人も男性の29%、女性の38%は、脂肪からの摂取カロリーが基準上限の30%を超えており、肥満や冠動脈性心疾患などの健康リスクが懸念されている。

 「がんに効く奇跡の○○」といった健康食品に惑わされず、植物性食品中心のバランスが良い食生活と適正体重の維持で健康を心掛けたい。

在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー

 東京生まれ。日本での記者職を経て、1995年より米国在住。米国の政治社会、医療事情などを日本のメディアに寄稿している。2008年、43歳で卵巣がんの診断を受け、米国での手術、化学療法を経てがんサバイバーに。のちの遺伝子検査で、大腸がんや婦人科がん等の発症リスクが高くなるリンチ症候群であることが判明。翻訳書に『ファック・キャンサー』(筑摩書房)、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)、『夫婦別姓』(ちくま新書)、共訳書に『RPMで自閉症を理解する』がある。なお、私は医療従事者ではありません。病気の診断、治療については必ず医師にご相談下さい。

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