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エアコンのない小学校で働く先生の悲鳴 日中は34℃「室内で過ごしていても、子どもが体調を崩す」

治部れんげ東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト
窓を開け、扇風機を使っても34℃。子どもは水をかぶって暑さをしのぐという(写真:アフロ)

 酷暑の中、体調を崩す人が後をたたない。

 名古屋大学・内田良准教授がYahoo!ニュース個人で昨日公開した記事によれば、都道府県別の公立小中学校エアコン設置率には、東京都の99.9%や香川県の97.7%に対し、愛媛県は5.7%と格差が大きいという。内田准教授は、エアコン設置が進まないのは財政負担が大きいから、とした上で、教育環境の公平性が保たれない問題を指摘する。

内田良「小中のエアコン設置 いまだ半数 暑くても設置率1割未満の自治体も 莫大な予算が課題」(2018年7月17日公開、Yahoo!ニュース個人)

 筆者は東京都在住である。小学生の子ども2人が通う公立小学校の教室にはエアコンがあり、暑い日でも勉強には支障がない。学習環境は自分が子どもの頃より良くなってきたと、考えていたが、公立学校でも地域による差が大きいことに驚いた。

 この暑さの中、エアコンがない学校では、どうしているのか。千葉県の公立小学校の先生からお話を聞いた。「昨日は室内で過ごしていても、具合が悪くなる生徒がいました」という。

――千葉県内の公立小中学校のエアコン設置率は、50%を切っています。今はどんな状況でしょうか。

先生  私が住む地域は、自治体(市町村)による格差が大きくなっています。私が住んでいる自治体の小中学校には、既に冷房が入っていますが、勤務先の小学校には入っていません。

――同じ県内、同じ地域でも違いがあるのですね。

先生  周辺の自治体を見ても、これから冷房の設置をすると決まっている自治体、既についている自治体と様々です。基礎自治体の単位では、予算不足をどうすることもできません。県単位で考えてほしい問題です。

 昨日は、室内で過ごしていても具合が悪くなる児童がいました。

―― 教室は、どんな様子でしょうか。

先生  エアコンがない教室は、朝6時半時点で30℃を超えています。窓を開けて空気を入れ替え、扇風機を回しても、熱い風が入れ替わるだけで、お昼には34℃にまで上がります。校舎の上の階に行くほど、屋上の熱を受けるため、気温は高くなります。

 子どもは2時間目が終わると暑さでぐったりしています。頭から水道の水をかぶっている子もいます。室内で体調を崩す児童が出てきますから、授業を中断して水分補給をしています。

 朝日新聞の記事で、専門家が「エアコンのある教室にとどまる勇気を」と話していますが、そもそも私の勤務先の普通教室には、エアコンがないので、無理な話です。たとえ、特別教室にエアコンがあったとしても、全校生徒800人が、どうやってひとつの教室で過ごせるでしょう。

 これが、現場で起きていることです。

 筆者がこの原稿を書いている部屋は冷房が効いている。また、自分の子どもの学校には冷房がついているから、想像力が欠けていた。暑さ対策については、子どもに勇気を持って何かをしろという、根性論では被害が大きくなるだけだろう。

 もし、記事を読んでいる方のお住まいの地域の小中学校にエアコンがなく、暑さで困っているようなことがあれば、設置の要望を教育委員会や自治体に伝えてほしい。

 また、自治体単位の格差をなくすため、早急に中央政府で予算をつけて全国の小中学校にエアコンをつけてほしい。私たちが税金を払っているのは、そういうことのため、ではないか。

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト

1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。2006年~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年からフリージャーナリスト。2018年一橋大学大学院経営学修士。2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、国際女性会議WAW!国内アドバイザー、東京都男女平等参画審議会委員、豊島区男女共同参画推進会議会長など男女平等関係の公職多数。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館新書)、『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)などがある。

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