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自国の選挙の集計や報道の公正さへの認識をさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 選挙は民主主義社会維持のために欠かせない仕組み。集計も当然公正さが必要。(写真:アフロ)

民主主義を支えるのに欠かせない仕組みの一つとして挙げられる選挙だが、その結果は大きな影響力を持つことから、色々な思惑による画策が生じ得る。今回は世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果から、自国の選挙において集計や報道の公正さがどの程度保たれているのかの認識について確認する。

はじめに示すのは自国の選挙に関して投票が公正に集計されているか否かについて。これは実情ではなく、回答者がどのように思っているかを答えてもらったものに過ぎない。公正な集計への信頼度合い読むこともできる。

↑ 自国の選挙において投票は公正に集計されている(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=-1、まったくそうではない=-2での平均値)(2017~2020年)
↑ 自国の選挙において投票は公正に集計されている(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=-1、まったくそうではない=-2での平均値)(2017~2020年)

選挙の集計についてもっとも公正さで信頼されているのはスウェーデン。次いでニュージーランド、スイス、ドイツ、フィンランド。逆に信頼されていない、公正でない集計が行われていると疑う人が多いのはイラク、メキシコ、コロンビア、ブラジル、ルーマニア。実情は別として、割と印象通りの国が並んでいる感はある。

日本はといえばプラス0.960。詳細を確認すると公正な集計は行われていないと考えている人は15%ほどいる。ただし分からないとの回答をした人も15%ほどおり、これが全体的な値を低いものとした一因といえよう(このパターンは今設問に限らず、日本では結構多い)。

次にジャーナリストの報道姿勢。自国の選挙においてジャーナリストは公正に報道しているか否か。設問原文では「Journalists」とあり、単純にジャーナリストを自称・他称する人だけでなく、新聞や雑誌の記者、報道関係者なども含むが、報道媒体全体は含まれないと解釈できる。

↑ 自国の選挙においてジャーナリストは公正に報道している(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=-1、まったくそうではない=-2での平均値)(2017~2020年)
↑ 自国の選挙においてジャーナリストは公正に報道している(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=-1、まったくそうではない=-2での平均値)(2017~2020年)

選挙におけるジャーナリストの公正さへの認識はどの国も厳しいようで、グラフの縦軸の最大値がプラス0.800に留まってしまっている。マイナスを示したのは6か国、ギリシャ、イギリス、アメリカ合衆国、ルーマニア、台湾、そしてウクライナ。色々な意味で納得をしてしまう顔ぶれではある。

プラスの値がもっとも大きい、つまり選挙ではジャーナリストは公正に報道をしているとの認識が強い国はスウェーデン、フィリピン、アゼルバイジャン、コロンビア、ドイツ、香港など。

日本はといえばプラス0.275。一応公正さを保っていると認識されている側ではあるが、その度合いはわずかなもの。なお「分からない」の値は20.0%で、今回取り上げた国の中では最大値を示しており、これが中途半端な値となる一因の可能性は否定しない。

選挙の集計は公正に行われなければ選挙そのものの意味は無くなるし、有権者にとっては貴重な情報源となるジャーナリストが公正な報道をしなければ、投票結果は有権者の本来の思惑とは異なるものとなってしまいかねない。実情として公正さの上で行動するのはもちろんだが、国民自身に公正であると認識されるような姿勢を示してほしいものではある。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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