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未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

2020年の未婚人口男女差

未婚男性の「男余り現象」が止まらない。

「男余り」とは、特に未婚の男女の人口差において、未婚男性の方が未婚女性より多く存在するということを意味する。

「え?日本の人口は女性の方が多いんじゃないの?」という人がいる。

確かに全人口においてはその通りだ。2020年国勢調査において、15歳以上人口で見れば、男性5365万人に対し、女性は5746万人であり、女性の方が400万人弱ほど多い。しかし、それは女性の方が長寿であるからであり、こと未婚男女だけに限定して比較すると圧倒的に「男余り」なのである。

2020年の国勢調査による未婚の「男余り」は、約430万人である。これは、1920年の国勢調査開始以降の最高記録である。

各年齢別にみても、ほぼどの年代も「男余り」である。女性の方が上回るのは75歳以降で、これは決しておじいちゃんがモテモテだったというわけではなく、未婚のまま男性が先に死亡しているからだ(「いのち短かし、恋せぬおとこ」未婚男性の死亡年齢中央値だけが異常に低い件)。

※配偶関係別集計は15歳以上が対象であり、14歳以下は含まない。

不詳補完値による再計算

ちなみに、この数値は不詳補完値によるものであり、2015年まで公表されていた「不詳を除く値」とは異なる。

総務省統計局は、今回の国勢調査から配偶関係別集計に「不詳補完値」を導入している。これは、従来から配偶関係不詳の割合が多くなっていることに対する処置である。

これに伴い、社人研もこの不詳補完値を採用したことで、今後はこの不詳補完値が正となる。あわせて従来、不詳を除く計算方式で出していた生涯未婚率の正式値も変更となるが、この不詳補完値による遡及集計は2015年までのため、2010年以前の数字に変更はない。

そのいきさつに関してはこちらの記事に詳しく書いた通りだ。

【国勢調査】不詳補完値の正式採用により、2020年の生涯未婚率は男28.3%、女17.8%へ

実は、当連載でも一度この「男余り現象」については2015年の国勢調査をベースに記事化している(結婚したくても、340万人もの未婚男性には相手がいない「男余り現象」の残酷)のだが、その当時はまだ不詳補完値というものが存在せず、従来の不詳を除く方法で算出していた。

2015年については遡及集計されているので、改めて2015年時点の「男余り」状況を掲載する。

以前は約340万人だったものが、不詳補完値では約408万人へと増加したことになる。

若者からおじさん余りへ

2015年と2020年とを比較してみると、2015年はわずかに20-30代の若年層の男余りの方が多かったのだが、2020年になると完全に40-50代の中年未婚に逆転されてしまっている。つまり、未婚といっても、今では「未婚おじさん余り」になっているのである。

写真:イメージマート

年齢別の5年間の比較をすると明らかだが、20-30代では「男余り」人口が少しだけ減少しているのに対し、40-50代では10万人以上も増えている。

これは、この5年間で35-44歳の未婚男性があまり結婚していない(できなかった)ということを意味する。だからといって20-30代未婚男性が結婚しているというわけではない。この世代の絶対人口そのものが減少しているためにすぎない。

さらに、注目なのは60代以上の未婚「男余り」が増えていることだ。

これは、以前に比べて高齢未婚男性が少しだけ長生きしていることによるだろう。未婚男性の死亡中央値が67歳とはいえ、それでも以前に比べれば全体的に寿命は延びているからだ。

このままの推移でいけば、やがて、この「未婚のおじさん余り」がそのまま「未婚のおじいさん余り」へと移行していくだろう。未婚者といえば、今までは若い人たちを指すものと相場が決まっていたが、20年後には未婚者とは高齢者を指すものになるかもしれない。

未婚という言葉は、「未だ婚姻せず」というものだが、もはや婚姻する可能性がゼロに近い高齢者にいつまでも未婚という言い方をするのもおかしなものである。60歳をすぎた未婚者は「無婚者」という呼び方でもいいのかもしれない。

「男余り」になる原因

さて、なぜこのような未婚の「男余り」が起きるかについては以前も書いた通りである。

簡単にいえば、そもそも男女出生比が1.05で男児が多く、昔のように乳幼児死亡率も高くない現代では、ほぼ生まれた子はそのまま無事に成人する。毎年5%ずつ多く生まれる男子が累積することにより「男余り」が生まれる。

そして、もうひとつは「時間差一夫多妻制」によるものである。既婚男性が離婚再婚を繰り返し、再婚のたびに初婚女性とくっつくことが多いために、一度も結婚したことのない未婚男性が割を食うというものだ。

詳しくは→離婚再婚を繰り返す「時間差一夫多妻男」のカゲで生涯未婚の男たちが増えていく

写真:アフロ

いずれにしても、約1850万人の未婚男性に対し約430万人もの未婚男性が余っているのは事実だ。要するに、これは全ての未婚女性が結婚したとしても430万人には相手がいないということである。その割合は未婚総数に対して実に23%にも達する。「恋愛強者3割の法則(強者3:中間4:最弱者3)」に照らせば、恋愛最弱者の3割層のほとんどは相手がいないということである。

残念ながら、海外に活路を見出そうとしても無駄である。「男余り」はほぼ全世界において共通だからだ。日本の10倍以上の人口を誇る中国では、2010年段階で約3000万人の「男余り」だった。

であれば、「相手がいなんだからしょうがない」と割り切り、結婚相手を見つけるより、自分の打ち込める趣味などを見つけたほうが、人生の満足度は高まるだろうし、世の中の経済も活性化するだろう。「余り」とは「豊か」であるという意味でもある。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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